「年をとるとね、だんだん人付き合いが少なくなるけど、お店をしていることでいろんな人と知り合える。ここでみんなの笑顔が見られる。それが楽しいんです」

 佐藤さんのように、定年前からその後を考えて準備を始める人もいれば、定年後に別の活動を経てから仕事に就く道を選んだ人もいる。

 川崎市の美子さん(仮名・69歳)は、70歳を目前にして仕事の場に復帰する。

「保育士として37年間働き、60歳で定年退職しました。その後7年間はボランティアをしてきましたが、『もうすぐ70になっちゃう』って急に焦りだしたんです。『今しかない』と思って、67歳のときに福祉の学校に入学しました」

 専門学校に2年通い、この春卒業したら介護福祉士として働く予定という。国家試験は1月に終えている。

 介護の世界で働くことを決めた理由は、がんで旅立った母が通っていたデイサービスで職員に助けられた日々が忘れられず、次は自分が、と思ったからだという。

「70歳からの再就職なんて例外」と思う人がいるかもしれないが、今はそれほど珍しいケースではない。

■今年度の最高齢85歳の男性就職

 中高年の就活を無料で支える公益財団法人産業雇用安定センターは、全国の労働局やハローワークと連携し、これまでに29万人もの再就職や出向を支援してきた。

 全国の地方事務所で展開される「キャリア人材バンク」では、一人の求職者に同世代のコンサルタントがつき、キャリアの棚卸しをしながら再就職への道を伴走する。

「我々が行っているのは、いわゆるマッチング。中小企業からの要望を聞いたコンサルタントが求職者の性格やキャリアをもとにつなぎます」(担当者)

 ほかにもシニアが多く就労相談などに訪れる「東京しごとセンター」。運営主体の公益財団法人東京しごと財団の担当者がこう話す。

「70歳を過ぎても80歳を過ぎても就職できます。85歳前後でも大丈夫です。今年度の最高年齢は85歳の男性で、労務のお仕事に就かれました。過去には87歳の女性が介護事業所に就職されましたよ」

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