全国300カ所のハローワークには「生涯現役支援窓口」が設けられている
全国300カ所のハローワークには「生涯現役支援窓口」が設けられている

「定年後は悠々自適に」なんて今は昔。人生100年時代、隠居生活なんてしていたらお金は続かない。60歳でも65歳でも「就活」なのだ。資格を取ったり、プロに相談したりして次の働き場を見つける。そんな生き方を実践するためのノウハウやアドバイスを紹介する。何歳からでも遅くないのだ。

【グラフ】人材バンクによる再就職者の受け入れ職種はこちら

*  *  *

 兵庫県加古川市の山のふもとにある「さとうさんちのピザ屋さん」。戸建ての1階にある店で、ランチ時は行列ができる。

 60歳で定年退職した佐藤愼剛さん(67)が63歳のときに妻の多美子さん(65)と開業した店だ。

「若いころからキャンプやボランティア活動をしていて、バーベキューとか薪を使って何かを作るとかが好きだったんです。結婚後も個人でやっているピザの店によく行きました」

 佐藤さんがそう話すと多美子さんが続けた。

「私からピザはどうって提案したんです。夫はラーメンぐらいしか作ったことがない人で(笑)。でも私たちは昔からいつもピザばかり。だから、『ピザしか出さない、ピザが好きな人に来てほしい店』にしたかったんです」

「さとうさんちのピザ屋さん」の外観
「さとうさんちのピザ屋さん」の外観
いちごやマンゴー、レンコン、カキなど旬の食材を使ったピザを提供
いちごやマンゴー、レンコン、カキなど旬の食材を使ったピザを提供

 佐藤さんは、55歳を過ぎたころから定年後の“仕事”を考えるようになったという。雇用延長すれば65歳まで働けたが、「65歳になった時点ではどうなんだろ、馬力が出ないのでは、という思いがあって。やるなら早めがいいと」。

 多美子さんに相談し、ボランティア活動の仲間や会社以外の友人らにも聞くなどして58歳のときに決断した。定年までの2年間は準備期間で、家の改装などは定年後に手がけた。

 開業資金は1千万円。窯を買い、家を改装した。図面を見ながらモノづくりをする会社員時代の経験が生きた。できる限りは自分たちで造り、節約した。

「『これで第二の人生!』という気負いを持ちたくはなかったので、週3日の営業にしました。自分が遊べる時間や、家に友人たちを招いて過ごす時間も大切にしたかったんです」

 現在、娘2人も店の手伝いをしているといい、家族だけで回している。

次のページ