岸田首相
岸田首相

 防衛費増を打ち出す岸田政権。しかし、衆参予算委員会での首相の答弁は明確さを欠いている。元海将の香田洋二さんが、専門家の立場からその理由を解説する。

【写真】 岸田政権の「防衛費増」に物申した元海将がこちら

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 岸田首相が防衛費を大幅に増額し、2027年度からGDP(国内総生産)比2%にする方針を決めたことは率直に評価できます。けれども、お金さえ付ければ防衛力が向上するかといえば、そうとは限りません。

 国産の12式地対艦誘導弾(能力向上型)と島嶼防衛用高速滑空弾の26年度の実戦配備に加え、極超音速誘導弾の研究開発も進める。米国製巡航ミサイル「トマホーク」の取得に23年度予算案で2113億円を計上しています。しかし、ミサイルがなぜ4種類も必要なのか、増税までお願いする国民に十分な説明がなされていません。

 私は10年ほど予算を担当し、イージス艦一番艦の導入に関わりましたが、米政府の内諾を得てから足掛け6年を費やしました。時間がかかってもきちんと精査すれば、今回も所要の防衛力を満たすミサイルは2種類くらいに落ち着くはずです。なりふり構わず予算をつぎ込んで“背伸び”しています。

 しかも、トマホークをイージス艦に搭載して運用するなど、海上作戦を無視したド素人ぶりを暴露しています。日本の場合、打撃を主任務とする米軍と異なり、イージス艦は対潜水艦戦のときに艦隊を守ることが第一義です。その任務を捨ててトマホークを撃ちに行くことなど外道です。こんな矛盾が生じるのは、最近の防衛計画策足に制服組の自衛官が排除され、現場の意向が反映されてこなかったからです。

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