親による高額献金や信仰の強制によって、子どもの自由が奪われる「宗教2世」問題。当事者らが「宗教2世問題ネットワーク」を立ち上げるなど大きな社会問題となるなか、昨年12月25日に投開票された西東京市議選(定数28)の結果が注目を集めた。
過去最多の40人が競い、無所属で立ったお笑い芸人の長井秀和氏(53)が3482票を得てトップ当選を果たしたのだ。
「間違いないっ!」の決めぜりふで、かつて「エンタの神様」(日本テレビ系)などで人気を集めた長井氏。熱心な創価学会員である両親を持つが自身は2012年に脱会し、選挙戦では宗教2世の救済を訴えた。
2世問題に便乗した転身かと思いきや、立候補を表明したのは安倍晋三元首相が銃撃される前の一昨年8月。1月5日午前8時ごろ、西武柳沢駅前で朝立ちをしていた本人を直撃すると、「銃撃事件でカルト宗教に対する世間やメディアの関心が強くなりましたよね」と“追い風”を認めつつ、「私は創価学会の2世として知っている内情もたくさんあります。声を上げられない立場の弱い人のためにも、政治家としてできることをやっていかないといけない」と熱っぽく語った。
長井氏によれば、両親は創価学会の仏壇購入などに約2千万円を費やしたという。
「旧統一教会みたいに極端に高額ではないですけど、長い間献金し、総額は学会も変わらないと思います。寄付が生きがいになってしまっているので、やめろと言ってもやめられないですよね」
宗教2世にとっての壁は親との関係だという。旧統一教会の宗教2世が昨年10月に記者会見を開いた際、教団は両親の署名入りで中止を迫った。
「教団は親に、子どもよりも宗教を優先させます。宗教2世の救済には経済的な支援だけでなく、喪失した彼らのコミュニティーを埋め合わせていく必要もあると思います」
トップ当選の期待に応えられるか。
※週刊朝日 2023年1月20日号