コードを食いちぎる被害も
コードを食いちぎる被害も

 今年9月初旬、新宿・歌舞伎町では巨大ネズミ捕獲大作戦が展開された。新宿に限らず、盛り場ではネズミの目撃情報が急増中だ。飲食店に人が戻ってきたことと関係があるのか、はたまた築地市場に巣くっていた「ヤツら」が移動してきたのか?

【図で確認】警戒心が強い?東京都に出没する主なネズミ3種類はこちら

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 外国人観光客の受け入れが緩和された10月某日、取材を終えて東京・築地の編集部を出て新橋の駅前広場を歩いていた夜のこと。視界の隅に動くものを感じて目を向けると、歩道の隅を走り抜けるネズミを発見した。

 それだけじゃない。新橋を抜けて銀座へ入ると、今度はビルの隙間の駐車場の壁際でもやや大きめのネズミを見た。さすがに短時間で2回遭遇したのには驚いたが、どうやら界隈では珍しい光景ではないようだ。

 目当てのバーに入り、あいさつ代わりに目撃談を報告したら、カウンターに並んだ数人の客が、右から左から「俺も見た」と言ったのだ。バーのマスターも「夜、店を閉めた帰り道ではもう当たり前の光景。間違いなく昔より増えていると感じている」と教えてくれた。この夜のネズミ談議では「やっぱり築地市場のネズミが移動してきたのかもね」という結論になったのだが……。

 築地市場が閉鎖されたのは2018年10月。閉鎖に伴い、1万匹以上はいるとも推定された市場に巣くうネズミの一大駆除作戦が展開された。粘着シート数万枚を敷き詰め、大量の殺鼠(さっそ)剤を投入し、2千匹弱のネズミが捕獲される一定の成果を上げた。

 とはいえ、相手はネズミだ。わずかな隙間や地下の配管を通って生き延びた“敵”も相当数あったはずだ。

 だが、ネズミ駆除を含む建物の環境衛生管理事業を行うシー・アイ・シー(CIC)の執行役員・研究開発部長の小松謙之博士は「都内の繁華街では今、たくさんのネズミが目撃されていますが、築地のネズミが移ってきた可能性は低いと思います」と言う。

 小松さんが続ける。

「築地市場にいたネズミの9割はドブネズミです。一部、果物を売っていた場所にはクマネズミがいましたが、ほとんどは生モノや肉類をエサとするドブネズミです。警戒心が強いクマネズミと違い、ドブネズミは殺鼠剤をホイホイ食べ、ホイホイ死んでしまう。築地では大量の殺鼠剤を使いましたから、大半はすみかの穴蔵の中で死んでしまったと考えています」

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