恨み節をぶつけながらも、まんざらでもない様子がうかがえる。現在は、そのジョンソン&ジャクソンの4回目となる公演「どうやらビターソウル」の準備の真っ最中だ。
「やりたいコンセプトとかストーリーがあって公演を打ってるわけじゃないので、取材いただいても気の利いたコメントは一切できないんです。ただ、今回は小劇場になじみのない渡辺真起子さんに出ていただけることになったので、そこで、何か面白いことが起こったらいいなと思っています」
断られて当然と思って頼んでみたら、快諾してくれた。
「もちろん楽しみではあるけれど……若干、『大丈夫かな? 怒られるんじゃないかな?』っていう不安もあります。一方で、ちょっとだけ“怒られるためにやってる”みたいな部分もあるんですよ。昔から、怒られることで、自分のあるべき立ち位置を確認して安心できるというか。そういう精神は昔からあったと思います。褒められて、おだてられて、優等生的な表現に近づけていくなんて言語道断(笑)。そういう芝居なら、ほかに素晴らしい方がいっぱいいらっしゃるし、真面目なことやってると、『いや、違うだろ。俺のくせに』ってどっかで自分にツッコミを入れてしまうんです。馬鹿馬鹿しいことをやっているぐらいのほうが、自分の中ではつじつまが合う」
とはいえ大倉さんも、演劇だけでは食べていけない時期を経験している。映像に進出し、“売れた”ことで、若い頃の渇望感が満たされたりはしなかったのだろうか。
「満たされるほど売れてんのかな?(笑) そもそも、自分が“売れた”なんて実感はないです。確かに、食えないことはなくなりましたけど、別にスターになったわけでもないですし。奇跡的にこの仕事で生活できてる。本当にまぐれっていう感じです」
(菊地陽子 構成/長沢明)
※週刊朝日 2022年11月4日号より抜粋