『クラムボンはかぷかぷわらったよ宮澤賢治おはなし30選』(澤口たまみ 岩手日報社)
『クラムボンはかぷかぷわらったよ宮澤賢治おはなし30選』(澤口たまみ 岩手日報社)

【岩手】岩手大農学部卒ならではの視点と「賢治の恋愛」の切り口が斬新
『クラムボンはかぷかぷわらったよ宮澤賢治おはなし30選』(澤口たまみ 岩手日報社)1320円

東山堂イオンモール盛岡南店(盛岡市) 横矢浩司店長

 岩手県在住の日本エッセイストクラブ賞受賞作家・澤口たまみさんが、宮沢賢治作品を30作セレクト。あらすじ・ダイジェストにご自身の解説を添え紹介する作品ガイドです。

 数多くの宮沢賢治研究本とは一線を画す平明な文章で、中でもライフワークのひとつとして続けられている「賢治の恋愛」をベースにした読み解きが非常に面白く、タイトルにもなった“クラムボン”の解釈をはじめ、思わず膝を打つような記述が随所に見られます。

読後、賢治作品から違った景色が見えてくる一冊です。

【宮城】国語教員42年。地元講談師が語る ふるさとの偉人、哲人、傑人列伝
『講談で知る 宮城の人物』(村田琴之介 金港堂出版部)1100円

金港堂本店(仙台市) 田高佳枝さん

 宮城県に縁のある人物──伊達政宗、千葉卓三郎、吉野作造、神永昭夫ら、総勢10名を虚々実々入り乱れた講談で伝える一冊。

 講談がブームになっている今日、講談師が語る、まるで見てきたような臨場感あふれる歴史の一場面に、先人たちの業績に新たな視点で興味を持つことができるでしょう。

 仙台出身で1964年開催の東京五輪・柔道無差別級銀メダリストを語る、「人生の金メダル神永昭夫」の一席を収録したCD付き。文章だけでなく、実際の語りを通してもその魅力を味わうことができます。

【秋田】世紀の国策事業は今!? 水質環境と周辺住民の変遷
『八郎潟はなぜ干拓されたのか』(谷口吉光 秋田魁新報社)880円

加賀谷書店茨島店(秋田市) 泉沢潤店長

 日本一のモデル農村「大潟村」をつくるために、日本で2番目の面積の「八郎潟」は干拓された。約60年前の話である。著者は社会学者であり地域の活性化に深く関与している。現在、水質悪化等の問題を抱える八郎湖を再生させるためには、眼前の課題への対症療法だけでは行き詰まってしまうと考えている。

 なぜ干拓は行われたのか? 漁業従事の周辺住民の生活はどんな影響を受けたか?

 過去にさかのぼって問題の原因を明らかにして議論を喚起し、今後の前進の手がかりを掴もうとしている本である。

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