誰よりもファンに、この喜びを伝えたかった。ドーム公演決定の発表後、少しでも近くに行こうとするかのように、自然に肩を組み合って花道を駆け抜けたSexy Zoneの3人。左から、中島健人、松島聡、菊池風磨。「一生にさあ、一度しかないわけじゃん、初ドームツアーの発表って。こんな感覚なんだな!」と中島。(撮影/小黒冴夏)
誰よりもファンに、この喜びを伝えたかった。ドーム公演決定の発表後、少しでも近くに行こうとするかのように、自然に肩を組み合って花道を駆け抜けたSexy Zoneの3人。左から、中島健人、松島聡、菊池風磨。「一生にさあ、一度しかないわけじゃん、初ドームツアーの発表って。こんな感覚なんだな!」と中島。(撮影/小黒冴夏)

“そのとき”はあまりに突然だった。8月14日、横浜アリーナ。Sexy Zone「ザ・アリーナ」ライブ中盤のMC中、背後のスクリーン右上に出ていた「次の曲まで」のカウントダウンが0:00に近づき、慌てて告知をまとめにかかるメンバー。物々しいブザー音が鳴り響き、ステージが暗転すると、スクリーン上で10、9、8、とカウントダウンが始まった。3、2、1……。 

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「緊急速報」

「さあ行こう」

「次のSTAGEへ」

「東京」

「大阪」

「ドーム公演決定」 

 映し出された超弩級サプライズニュースに、声出し禁止の会場は、押し殺した悲鳴と割れんばかりの拍手に包まれた。明るくなったステージには、固く抱きあうメンバー3人の姿が。がっくりと頭を垂れ泣き崩れる松島聡は、菊池風磨と中島健人に「聡ちゃんどうした?」と心配され、「だいじょうぶですっ……」と裏返った声で応じた。その様子に、「大丈夫じゃないよ(笑)」と目を細める兄貴分2人。

「歴史的出来事が今日起こりました」「やっと来たー!」「いえぁーっ!」。それぞれ思いを爆発させて雄たけびをあげると、やにわに肩を組み、会場前方から後方へと続く花道を全力疾走した。くしゃくしゃな笑顔、感無量の清々しい笑み、涙をこらえる泣き笑い。最高の“いい顔”で駆けるウイニングランに、見守る1万5千人のSexy Lovers(Sexy Zoneのファンの呼称)の目にも光るものがあった。 

「ありがとうございます!」。走り終えると、息を切らしながらファンに何度も感謝を伝える3人。そして、松島「来たねえ」、菊池「マジで長かった」、中島「11年かかりました。ようやくだよ。数々の先輩、そして同年代、後輩、いろんな人がドームに立って、そのなかで俺たちはいつ行けるのかいつ行けるのかずっと考えたなかで、ようやく、たどりついた……!」と万感の思いを口にした。 

「11年間いろいろありましたけども、挑戦し続けるのかやめるのかっていう二択のなかで、Sexy Zoneはずっと挑戦し続けるという選択をしてきました。(嗚咽しながら)ほんとに、その二択を僕も一時期、改めて一人で考えさせてもらったときに、戻るという選択をして[※突発性パニック障害の治療のための活動休止を経て、一昨年復帰]。このステージから見たこの景色だったり、デビュー前から苦楽をともにしてきたスタッフのみなさん、メンバー、もちろん家族や友人もそうです、そして何よりもファンのみなさん。この、このみなさんを見たときに、また改めて僕はアイドルをやりたいと思いました。だから『挑戦する』を選んでよかったなと思ってます。今回、こういううれしい報告もできました。挑戦し続けるきっかけをまた作ってくださったのはみなさんです。勝利、そしてマリ(マリウス)の気持ちもふくめて、改めてお礼を伝えさせてください。本当にありがとうございます!」(松島) 

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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