空き家や空き地の管理、活用法について無料相談を行っているNPO法人空家・空地管理センターには、年間2千件を超える相談が寄せられる。同センター理事の伊藤雅一氏は、「空き家が長年放置される背景には複合的な要因がある」と話す。

「ここ数年増えているのは、施設にいる親が認知症になってしまったというケース。親の不動産の売却や解体には、所有者(親)からの名義人変更や委任状が必要になりますが、認知症になると本人の同意を得ることが難しくなります。その場合、成年後見制度を利用して成年後見人に認められれば手続きは可能です」

 ただし、勝手に売却することはできず、売却の必要性や本人の看護状況などについて家庭裁判所で審理され、許可をもらわなければならない。

「それに諸手続きを進めるためには、弁護士や司法書士に業務を依頼する必要もある。手間も費用もかかるため、二の足を踏んでしまう方も少なくありません」(伊藤さん)

 親が存命中は空き家として維持し、死後に相続してから売却するケースもある。だが、5年、10年と無人のまま放置している間に老朽化し、売却時には建物の資産価値がほぼゼロになっていることも珍しくないという。

「荷物が丸ごと残っていて、屋根や外壁、床が傷んで半壊しているような状態になると、売れないどころか、残置物の処理や解体に数百万円かかることもあります。そうなると手をつけられず、年数万円の固定資産税を支払いながら放置するといった事態になりかねません」

■外観を目視点検「100円管理」

 こうした事態を招かないためには、親子で不動産の相続について早めに話し合って準備を進めていくことが大切だ。

「例えば、元気なうちからコンパクトな高齢者専用賃貸などに住み替えて、実家は賃貸物件として貸し出すといったことも考えられます。月数万円でも収益を生むような状態を作れれば、その後の相続や売却もスムーズにいきやすいでしょう」

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