残置物がある家でも売る方法はある(提供:家いちば)
残置物がある家でも売る方法はある(提供:家いちば)

 90年代から今も続いている「空き家問題」。放置される空き家は増える一方だが、近年は新しい売買サービスの登場やニーズの変化によって、資産価値がない古屋も売る方法があるという。どうすれば売れるのか、中古住宅市場の最前線を取材した。

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「空き家になってからもう4年。いい加減処分したいんですけど、なかなかうまくいきませんね」

 愛知県在住の濱野さん(60代男性)が頭を抱えているのは、郊外にある実家の管理だ。実家は広さ300平方メートルの庭付き木造一戸建て。濱野さんが小学生だった50年ほど前に、家族7人が暮らす住居として建てられた。

 濱野さんら兄弟が独立してから、しばらくは父と母2人で暮らしていたが、7年前に父親が他界。さらに4年前、母親が転倒して右足を骨折したことをきっかけに高齢者施設へ転居したことから、実家は無人のまま放置されることになった。

「兄弟は県外、私は実家から車で40分ほど離れた都市部に家族と住んでいます。しばらくは母が戻るかもしれないとそのままにしていたんですけど、もう90歳近くで車椅子の状態だし、私たち兄弟も実家に住むつもりはないので、売ろうということになったんです」

 濱野さんは母親の代理人となって地元の不動産屋と相談し、「古屋付き土地」として実家を売りに出した。売却希望価格は650万円。家財道具などの残置物は処分済みだが、リフォームなどはしていない。その後、数件問い合わせがあって内見にも立ち会ったが、成約には至らなかった。

「やっぱり建物の古さと交通の不便さが……。大きな病院に行くのにも車で20分ぐらいかかるし、小中学校も近くにないから子育てするにも大変。リフォームしたり、解体して土地だけ売る手もありますが、どっちも数百万円くらいかかるでしょう? それをやっても売れるかどうかわからないし、悩んじゃいますよね」

 濱野さんのように、空き家の処分に悩む人は多い。総務省発表の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年時点で全国の空き家数は848万戸で、20年間で272万戸増加している。

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