撮影/戸嶋日菜乃(写真映像部)
撮影/戸嶋日菜乃(写真映像部) ヘアメイク/木内真奈美(Otie) スタイリスト/鈴木梨奈

 それが、今年になって、「ミネオラ・ツインズ」と「ザ・ウェルキン」というストレートプレイの翻訳劇への出演が続くことに。どちらも、目利き中の目利きである演劇プロデューサー・北村明子さん率いるシス・カンパニーのプロデュース作品だが、北村さんは、大原さんが出演した劇団☆新感線の舞台「メタルマクベスdisc2」を観て、その才能に惚れ込んだ。

「『ミネオラ・ツインズ』は初の歌なし、ダンスなしのお芝居で、しかも一卵性双生児の1人2役で出ずっぱり……。最初に台本を読んだときは、『なにこれ、無理!』と思いました(笑)。でも、共演者の小泉今日子さん、八嶋智人さん、演出家の藤田俊太郎さんに支えられて、千秋楽を迎えられたときは、今までにないような達成感を覚えたので、やってよかったなと思っています」

 共演者や演出家の影響で、ブロードウェーだけではなく、日本の演劇シーンにも、俄然興味を持つようになった。

「18年に、『ファン・ホーム』というミュージカルで、演出家の小川絵梨子さんと出会ったことがきっかけで、『シアター風姿花伝』のプロデュース舞台を観に行ったら、そこで、吉原光夫さんのお芝居を観て感激したり。風姿花伝は、『ザ・ウェルキン』にも出演する那須佐代子さんが支配人を務めていて、日本の演劇人たちは、いろんな形で演劇を盛り上げていらっしゃるので、そこにも刺激を受けます」

 ダンスなら、バレエとヒップホップのハイブリッド。音楽は、クラシックにも精通しつつ、ロックやポップスなどの大衆音楽に加え、ミュージカル音楽も歌いこなす。演劇は、ブロードウェーへの憧れを起点にしながら、映像でも舞台でも、膨大な熱量を持った人たちと出会うことで、日本オリジナルのミュージカルや翻訳劇などにも積極的に出演する。そんなハイスペックな彼女には、日本の演劇の未来が託されているようにも見える。

撮影/戸嶋日菜乃(写真映像部)
撮影/戸嶋日菜乃(写真映像部) ヘアメイク/木内真奈美(Otie) スタイリスト/鈴木梨奈

「こんなにもたくさんの演劇が溢れている中で、生きがいを見つけられるような作品に出会えていることに感謝します。『ザ・ウェルキン』で私が演じるのは、殺人罪で絞首刑を宣告されながら、妊娠している罪人は死刑を免れることができるからと、12人の陪審員の前で、堂々と妊娠を主張するサリーという少女の役です。大人数で奏でるアンサンブルは緊張感もありつつ、同時に緊張が一気にほぐれていくような、ユーモアたっぷりのやりとりもあって、緩急が面白いんです。集中力だけじゃなく、力を抜くお芝居もしなければならないんですが、お稽古では、先輩方のユーモアに大いに助けられています」

(菊地陽子 構成/長沢明)

週刊朝日  2022年6月24日号より抜粋