だが、当時の大卒・国家公務員の初任給が1万2900円(人事院資料より)のところ、輸入プラモデルは安くても1キット・500~600円ほど。メインは千円前後で中学生にはとても手が出なかった。

「しばらくはショーケースを眺めるだけでした。初めて買ったのは高校進学後。小遣いをやりくりして米国・レベル社のX-5(米軍の実験戦闘機で世界最初の可変翼機)を手に入れた時は本当にうれしかったですね」

 慶応大学在学時に演劇にのめり込み、2年間の休学中と卒業後に劇団四季で演出助手をしながら俳優の下積みをしていた時期の計5年間はプラモ制作から遠ざかっていた。

 しかし、俳優業に追い風が吹き出すと復活した。テレビドラマや映画のロケなどで多忙な中、芝居をしばし忘れて一人の時間を大切にしてきた。

 好きなのは飛行機。「乗るのも作るのも」と笑う。

「第2次大戦中のドイツの戦闘機・メッサーシュミットBf109、爆撃機・ドルニエDo17、夜間戦闘機・He219ウーフーはかなり作っています。メッサーシュミットは、いろいろなメーカー、縮尺のものを109機作ろうと思い始めて30年。せっかく 完成させても壊れてしまうので、まだ到達してませんけど(笑)」

 お気に入りは2箱買い、1箱は予備。購入すると「1週間くらいは、箱を眺めているだけで楽しい」。買ったものの制作に至らず積み上げたままの“積むプラ”は200個を優に超えており、「数えたことがないから」正確な数はわからないそうだ。

 石坂さんはプラモの魅力について、こう力説する。

「担当者やメーカー、それぞれの考え方がキットに現れていて、設計思想を垣間見られるように思います。組み立て説明書のスタイルやランナー(部品群)をどのように箱に納めるかもメーカーによって違います。大勢の裏方さんたちの苦労とこだわりを凝縮したのが、プラモなんです」

 プラモは、必ずしも実物を寸分違わず縮小しているとは限らない。

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工具にもこだわり。ルーペは必携!