あいじま・かずゆき 1961年生まれ。埼玉県出身。87年から東京サンシャインボーイズに所属。94年の「罠」までの全作品に出演。劇団休止以降、多くの舞台、ドラマ、映画で活躍。2010年には、相島一之&THE BLUES JUMPERSとして音楽活動を開始。近年の主な舞台出演作に、「マイ・フェア・レディ」「大地」「ミュージカル フランケンシュタイン」など。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に運慶役で出演中。
あいじま・かずゆき 1961年生まれ。埼玉県出身。87年から東京サンシャインボーイズに所属。94年の「罠」までの全作品に出演。劇団休止以降、多くの舞台、ドラマ、映画で活躍。2010年には、相島一之&THE BLUES JUMPERSとして音楽活動を開始。近年の主な舞台出演作に、「マイ・フェア・レディ」「大地」「ミュージカル フランケンシュタイン」など。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に運慶役で出演中。

 長年、俳優として活躍する相島一之さんは今年2月、あるミュージカルを観て、席を立てなくなるほどの感動を覚えたという。日生劇場で上演された「ラ・マンチャの男」。松本白鸚さんが26歳から半世紀以上にわたり演じ続けた舞台の、ファイナル公演だった。

「初めて『ラ・マンチャの男』を観たとき、僕はまだ20代でした。今回の白鸚さんの円熟の極みのような芝居も素晴らしかったですし、同時に、初めて観たときその迫力に圧倒されたことも思い出されました。帰り際、まだ舞台の余韻に浸りながら、『どうしてこんなに感動するんだろう?』と考えていると、ふと、『あ、さっきまで僕らは、演劇の魔法をかけられていたのか』と思い至った」

 劇場では、周囲を見知らぬ人たちに囲まれていても、一緒に驚いて、一緒に笑って、一緒に呼吸をすることができる。笑いや怒りや悲しみのタイミングが周りとズレることはあるけれど、いろんな人たちの心の動きが、空気に乗って伝わるのが、大きな感動につながるのでは? そう相島さんは考えた。

「松本白鸚さんを中心に、出演者の皆さんやオーケストラの皆さんが、心を一つにして劇場そのものに魔法をかけてくださっていた気がしたんです。いくらたくさんのカメラを使って、臨場感そのままに映像で残したとしても、あの劇場の空気を味わうことはできない。結局、演者と観客によって生まれる空気を味わうことが、演劇のコアな部分なんじゃないかと思ったりしました」

 白鸚さんのラスト公演となる「ラ・マンチャ~」は、公演途中に関係者に新型コロナ陽性者が出たことで、千秋楽までの約10日間にわたる公演が中止となってしまった。相島さんも、こと「ライブ」関係での、コロナによる影響は甚大だったと語る。

「僕は、12年ほど前からバンド活動をしているんですが、コロナになってからは、音楽活動は一切ストップしました。プロのミュージシャンの場合は、音楽をやることが生きる糧なので、それぞれのやり方で活動できますが、僕のような俳優が音楽をやっていても、『あなたにとってはお芝居がいちばん大事なことでしょ? 今はそれに専念すべきでは?』と言われてしまう。いろいろ制限がかかる中、やりたいことを続けるのは難しいです」

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