イラスト/ウノ・カマキリ

 小泉純一郎内閣のときに、東京でキッシンジャー元米国務長官、旧ソ連のゴルバチョフ元大統領、中曽根康弘元首相らのシンポジウムが開かれて、私が司会を務めた。

 中曽根氏が、日本もそろそろ憲法改正をしたいと主張すると、キッシンジャー氏は「反対だ」と強く答えた。「日本が現在の憲法を維持しているからこそ、アジアの国々も欧州も、そして米国も日本を信用しているのだ。日本が憲法改正を打ち出したら、世界中が日本に不信感を抱く」と言い、ゴルバチョフ氏も、日本が現憲法でいるからこそロシアも日本を信用しているのだと答えたのである。

 さて、日中関係である。

 習近平氏が訪米してトランプ大統領(当時)と会談した際、トランプ氏は習氏を信頼して、北朝鮮問題を中国経由で決着させる、と固めた。日本の立場がなくなると考えた安倍首相は二階俊博氏を中国に派遣した。習氏が最も信頼している政治家は二階氏であり、習氏は日中関係は極めて重要だと強調して、安倍氏は安心したようだ。

 4月中旬以降、駐日中国大使と米国大使が、続けざまに二階氏と会談している。一体どんなことが話し合われたのか。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2022年5月6・13日合併号

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