東尾修
東尾修

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、ロッテの佐々木朗希に大きな期待を寄せる。

【写真】プロ3年目で「直すところはない」佐々木朗希投手

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 ロッテの佐々木朗希が3月5日のソフトバンク戦で最速163キロを記録するなど、直球は160キロ台を連発した。5回2安打無失点、9奪三振と文句のつけようのない内容。2月19日の日本ハムとの練習試合(名護)を含め、ここまで今春は実戦3試合、10イニングを連続無失点、17奪三振となった。

 あれだけ足をしっかり上げても、右足一本で立てる。下半身の強さ、体幹の強さ、上半身とのバランス。プロ入りしてから2年間で、しっかりと体を作ってきた証拠だ。体重移動もしっかりしており、直すところはない。

プロ3年目で「直すところはない」佐々木朗希
プロ3年目で「直すところはない」佐々木朗希

 160キロを連発したといっても、おそらくまだフルスロットル(全力)ではないのだろう。100球を超えても、おそらく160キロは出る。疲れがたまった時にどのようにバランスが崩れるのかは見てみないとわからないが、年間を乗り切る術、そして1試合の中での球数のマネジメントさえできれば、18勝5敗、防御率1.39でパ・リーグMVPになった昨年の山本由伸と同じような成績を収めてもおかしくない球を投げている。

 球数を減らすには1球で終わらせるような球がほしいというが、彼の球威、フォークボールのキレならば、ボール球はいらない。1球外して……なんて考えなくていいよね。これだけしっかり腕が振れれば、ツーシームやカットボールなど細かい変化の球でも155キロ前後は出てくる。そういったバリエーションは、数年先でも遅くはない。

 私が「20歳で完成したらおもしろくない。20歳代後半に完成していけばいい」と話したのは松坂大輔だった。いろいろな球種を投げる前に、一つひとつの武器になる球を磨くことの大切さをそう表現したのだが、佐々木朗希にも同じ言葉を送りたい。今でもフォークボールを投げ分けられているのだから、多くは必要ない。相手が分析しても打てない球を持っている。今ある球でどう打ち取るのか。そこで学べることもたくさんある。ただ、彼の場合、その成長曲線は当てはまらないのかもしれない。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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