帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「腰痛知らず」。

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【上虚下実】ポイント
(1)腰痛を訴える人が多いが、私はまったくの腰痛知らず
(2)姿勢がいいといわれるのが腰痛知らずの理由かも
(3)武術や外科医時代の手術で上虚下実の姿勢になった

 親しい友人が先日、中腰になって現れました。腰が痛いというのです。実はこの人は腰椎の変形がひどいのです。そこに別の友人が来たのですが、この人も前傾姿勢で歩いています。脊柱管狭窄症なのです。

 人生も後半になると、腰痛を訴える人が少なくありません。しかし、私はまったくの「腰痛知らず」なのです。なぜなのでしょうか。

 ひとつ、思い当たることがあるのは姿勢です。「あなたは姿勢がいいですね」と褒められたことが何度かあります。英国に代替療法の研修に行ったときも、英国人の講師に褒められました。海外で褒められると感慨が違いますね(笑)。

 では、なぜ姿勢がよくなったのでしょうか。これまでも何度か書いたのですが、ひとつは若い頃から武術をやっていたせいかもしれません。大学時代は空手部でしたし、その後、八光流柔術をやり、現在にいたるまで、太極拳を続けています。

 こうした武術に共通するのは、体をゆるめることが重要だということです。例えば、八光流柔術では急所(経絡や経穴)に手をかけた途端に気をそこに運んで相手を倒すのですが、自分の手の力が十分に抜けていないと、威力を発揮できません。このため、道場で立ったままで、一気に全身の力を抜く練習を何度もしました。

 空手の突きでも、突いたあとはすぐに力を抜くのが極意なのです。太極拳も相手の力をコントロールするために、自分の体はゆったりとゆるめています。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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