村木風海さん
村木風海さん

 昨年、著書「火星に住むつもりです~二酸化炭素が地球を救う~」が話題になった化学者で発明家の村木風海さん(21)。若き才能が進む先にはどんな世界が広がるのか。

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 地球温暖化の解決から人類の火星移住まで一貫して研究を行う独立系研究機関・炭素回収技術研究機構(CRRA)の代表理事・機構長として自ら研究を行い、さらには現役東大生でもある。日中は大学に通い、夕方から夜中までの時間を同機構で、二酸化炭素の研究に費やす毎日だ。

「二酸化炭素の研究を始めたきっかけは火星。小4のとき、祖父からプレゼントされたS・ホーキング博士の『宇宙への秘密の鍵』に載っていた火星の写真に心を奪われ、『絶対に将来、火星に行く最初の人間になる』と決め、すぐに火星に住むための研究を始めました」

 火星に住むには大気の95%を占める二酸化炭素を取り除く必要がある。その研究が、現在の温暖化防止の研究につながる。

「二酸化炭素を減らす研究をしていますが、二酸化炭素が嫌いなわけじゃなく、むしろ好き。『二酸化炭素に恋をしている』とさえ言っているほど」

 そう話す村木さんの最初の研究は、小学4年生のとき。二酸化炭素の固形物であるドライアイス入りのペットボトルの中で植物を育て、観察した。その後も思いつく限りの研究・実験を繰り返し、中学3年時に二酸化炭素回収装置「ひやっしー」の原型を完成させた。スーツケース大の装置で、内部のアルカリ性液体が空気中の二酸化炭素を回収する仕組み。高校2年生だった2017年に総務省「異能vationプログラム」に採択された。現在は都内の「ひやっしー工場」で月120台を生産できる設備を整え、2030年には全国270万カ所のオフィスや学校などでの利用を目指す。

 構想はさらに広がる。その一つが「そらりん計画」だ。ひやっしーで回収した二酸化炭素を、藻類を使ってエタノールや軽油に変えるというもの。間もなく最初の燃料ができるところまで到達した。

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