帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「の生き方、犬の生き方」。

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【見習う】ポイント
(1)猫がとにかくマイペースなのには感心する
(2)犬はその本性で、人を癒やすことができる
(3)猫、犬に一番学びたいのは、今を生きているところ

 私は気楽な一人暮らしで、ペットは飼っていません。しかし、猫とは付き合いがありました。その猫は「りゃんちゃん」といいます。病院の開設以来の同僚で、過日亡くなってしまった元看護師長のペットでした。

 彼女には、時々夕食をごちそうになりました。そのときに、出迎えてくれるのが、りゃんちゃんだったのです。といっても、たいてい彼は指定席の籐椅子の上でうずくまって寝ているのです。実に気持ちがよさそうです。

「りゃんちゃん」と声をかけると、目を開けてこちらを見るだけで、動こうとしません。

 だからといって、私のことを覚えていないわけではないのです。私がソファに座って、置き炬燵風の食卓に向かって一人で杯をかたむけていると、りゃんちゃんは、わざと私の足の前の狭い隙間を通るのです。それが、りゃんちゃんの親愛の情の表現だと思うと、なんとも可愛く感じます。

 だからといって、背中をなでてやっても、知らないふりをします。とにかくマイペースなんですね。そのふるまいには感心します。

「猫を被る」という言葉がありますが、その意味は「本性をかくし、おとなしそうに見せかける。また、知っていながら知らないふりをする」(広辞苑)ことです。これは猫のふるまいから生まれた言葉だと思うのですが、なかなかレベルの高い行動です。猫はこうした高度なふるまいで、マイペースであることを維持しているのではないでしょうか。見習いたい気持ちになります。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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