コロナ禍で皇室全体が見えにくい状況が続く中、眞子さんの結婚騒動は、国民の皇室への不信感や、皇室内の「女性差別」といった問題を浮き彫りにした。今後、皇室はどうあるべきなのか。4人の識者に聞いた。
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◆放送大学教授(政治学)原武史さん
「男系男子は軍事国家の名残。戦後の価値観で皇室典範の見直しを」
飛鳥・奈良時代や江戸時代には女性天皇がいたのに、明治の皇室典範で皇位継承者を男系男子に限ったのは時代背景も影響しています。西洋列強から開国を迫られた日本は、植民地化を免れるため急いで軍事国家をつくる必要があり、天皇を軍事的なシンボルにしたのです。京都にいたときは中性的な姿をしていた天皇が、ひげを生やし、軍服を着て馬や軍艦に乗るなど、男性化していった。女性天皇についても議論されましたが、結局除外されたゆえんです。
しかし、敗戦によってこの路線は破綻した。陸海軍を解体し、憲法を改正し、女性参政権を認めるなど、男女平等が進められました。
ところが、皇室については、根本の部分はまったく変えなかった。戦後の皇室典範でも依然として皇位継承者を男系男子のみに限っているのは、軍事国家の名残のようなものです。
このため、時間が経つにつれ、お濠の内側と外側の「ズレ」が拡大していきました。
いまや結婚しない自由や子どもを産まない自由はもちろん、LGBTの権利も認められるようになった。結婚した女性が必ず男子を産まなければならないというのは、もはや完全に時代遅れになっています。
さらに言えば、皇室制度自体を続けるのかという考え方が抜けています。憲法1条には「天皇の地位は主権の存する国民の総意に基づく」とあります。国民の総意がもう皇室はいらないと考えるのであれば、なくていいという話になる。こうした選択肢は考慮されていません。
とにかく今は存続が大前提になっていて、結婚後も女性皇族を皇室に残して女性・女系への道を開くのか、男系男子に固執して旧皇族の男子を養子に迎えるのかといった二者択一のような議論になっている。