※写真はイメージです (GettyImages)
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 例年ならば、間もなくインフルエンザの季節だ。ただし書きが付くのは、去年は流行しなかったから。「マスク生活だし、今年も大丈夫でしょ」と油断するなかれ。医師たちが「去年流行しなかったからこそ心配」と口々に言う理由とは──。

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 厚生労働省の専門家組織は11月17日、新型コロナウイルスの感染状況について、「1人の感染者が何人に感染を広めるかを示す実効再生産数が右肩上がりになっている」との見解を示した。

 このまま推移すれば、12月には再び感染者数の増加が見込まれるという。

 しかし現場の医師たちは「第6波」と同様に、インフルエンザの流行にも警戒が必要だと言う。ナビタスクリニックの久住英二医師もその一人だ。

「インフルエンザのワクチン接種の出足が例年より遅いのが気がかりです。コロナの感染対策のおかげもあって、去年インフルが流行しなかったことで、油断している人も多いように感じられる」

 実際、「今年もインフルは大丈夫でしょう」「コロナワクチンを打ったから大丈夫だと思っていた」という患者が多く見受けられると久住医師は指摘する。

 確かに昨シーズン、国内でインフルエンザは流行しなかった。これは1999年に現行方式で記録を取り始めて以来、初めてのことだった。

 国立感染症研究所の「季節性インフルエンザ受診患者数」の推計データでは、2017年シーズン(以下同)には約1458万人、18年は約1170万人、19年は約729万人。ところが昨20年は1万数千人台で、なんと例年の約1千分の1にまで激減した。

 久住医師は「昨年、流行しなかったからこそ心配だ」と言う。

「インフルエンザウイルスとの接触がなかったため、インフルへの私たちの抵抗力や抗体レベルが下がっている可能性がある。つまり、かかりやすくなっているわけです」

 同様の懸念を訴えるのは名古屋市の北医療生協北病院の近藤知己院長(小児科)だ。

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