(撮影/写真部・高野楓菜)
(撮影/写真部・高野楓菜)

 ほんのり薄暗くシックな店内に、珈琲(コーヒー)の芳醇な香り……。重厚感のある独特の美しさが漂う純喫茶は、世代を超えて愛される。長い歴史と自慢の看板メニューをもち、人々の思い出が染み込んだ名店であればなおのこと。季節は秋。ノスタルジーに酔いながら、甘くほろ苦いひとときを過ごしてはいかが?

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■珈琲館 紅鹿(ベニシカ)舎

(撮影/小黒冴夏)
(撮影/小黒冴夏)
(撮影/小黒冴夏)
(撮影/小黒冴夏)

創業1957年

住所:東京都千代田区有楽町1‐6‐8 松井ビル1階

現オーナーの父が考案したドリンク「カフェ・タカラズカ」が、近隣の東京宝塚劇場の観劇客に人気。バラの花を模した生クリームに熱い珈琲を注ぐと、スカートを広げて舞う女優のように、クリームがくるくる回り溶けていく。お客さんを楽しませようと親子でメニュー開発に勤しんだ結果、その数は240にのぼる。

■ニット

(撮影/写真部・高野楓菜)
(撮影/写真部・高野楓菜)
(撮影/写真部・高野楓菜)
(撮影/写真部・高野楓菜)

創業1963年ごろ

住所:東京都墨田区江東橋4‐26‐12

弱火で25分焼き上げた厚さ約3cmのホットケーキが有名。付属の透明のシロップは、氷砂糖を作る際にできる「氷糖蜜」。はちみつやメープルシロップに比べるとさっぱりとした甘みで、ホットケーキの風味を邪魔しない。喫茶店の前身はセーター工場だったことが店名の由来。店員が身に着けるえんじ色のベストは、汚れが目立たず派手すぎないから、と創業当時から続く制服だ。

■新宿 らんぶる

(撮影/写真部・高野楓菜)
(撮影/写真部・高野楓菜)
(撮影/写真部・高野楓菜)
(撮影/写真部・高野楓菜)

創業1950年

住所:東京都新宿区新宿3‐31‐3

地下へ続く階段をおりると、シャンデリアがさがる200席の店内が広がり、異世界に迷い込んだような感覚に陥る。看板メニューは、はち切れそうなほど具がつまった卵とツナのサンド。中身が少ないと寂しいから、と気づけば少しずつ量が増えているそう。今や、ブリオッシュ生地にたっぷりの生クリームを挟んだ話題のスイーツ「マリトッツォ」状態。

(文/本誌・大谷百合絵)

週刊朝日  2021年10月1日号

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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