林:美波さんもカンヌを?
美波 はい、カンヌこそ目指しています。
林:すごいな。ジュリエット・ビノシュ(世界3大映画祭のすべての女優賞を受賞したフランスの女優)とも共演したんですよね。
美波:はい、「Vision」(監督・河瀬直美、2018年)という映画で。私はジュリエット・ビノシュの背中を追って女優を続けてきたようなものなんですよ。「存在の耐えられない軽さ」のジュリエットがほんとに好きで、いつか共演したいという夢があったので、河瀬監督とスカイプで面接して、次の日「受かりました」と連絡が来たときに、主演がジュリエット・ビノシュだって聞いて「えっ、ウソでしょ!?」って号泣しました。こんなに早く共演できるなんて思っていなかったので。
林:ごめんなさい、私、その映画見てないんですが、どんな役だったんですか。
美波:私はジュリエットの通訳兼アシスタントの役で、河瀬監督は「撮影中はずっと役のままでいてほしい」という人なので、ふだんからジュリエットのアシスタントとしてずっと一緒にいて、すごく幸せな時間でした。
林:河瀬さんには2度ほどこのページに出ていただきましたけど、あれよあれよという間に世界的な監督になられました。
美波:フランスでもすごくリスペクトされています。
林:美波さん、「MINAMATA」がきっかけで、世界中からオファーが来るんじゃないですか。
美波:オファーはいただくんですが、オーディションをたくさん受けてもなかなか受からなくて、「なんでこの道に進んじゃったんだろう。無謀なことをやってるんじゃないか」ってときどき思います。でも、後戻りはできません。
林:野球の大リーグでも、パイオニアの野茂(英雄)さんは「なんでこんなつらい道を選んだんだろう」と思ったんじゃないですか。渡辺謙さんもたぶんそうだと思う。美波さん、頑張ってくださいよ。
美波:はい、頑張ります。でも、母語じゃない言葉で芝居をやろうとしている無謀さとか、課題が山積みなんですよね。先のことを考えると、果てしなく感じますが、「とりあえず2年はやってみよう」と夫も言ってくれているので、やるだけやってみようと思って。