仙台市にある「ほそやのサンド」
仙台市にある「ほそやのサンド」
創業当初と変わらぬレシピの「ほそやのハンバーガー」は値段が長い間据え置きの350円
創業当初と変わらぬレシピの「ほそやのハンバーガー」は値段が長い間据え置きの350円

 マクドナルドが日本に上陸したのは、1971年7月20日。しかしそれ以前にも国内にハンバーガー店はあったのだ。仙台には米軍仕込みの牛肉100%にこだわる日本で現存する最も古い店がある。

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<“本場の味をどうぞ” ハンバーガー銀座に進出>

 朝日新聞経済面にこの見出しが躍ったのは、1971年7月21日付。

<「米国で一番売れているハンバーガーを食べて下さい」(中略)日本マクドナルド(藤田田社長)は二十日、東京・銀座の三越銀座店の一階に最初の店を開いた。マクドナルドのハンバーガーの技術をそっくり輸入してつくっているので「本場の味です」と青い目のホステスを使って、一個八十円のハンバーガーを宣伝中(後略)>

 記事からは“黒船来襲”の雰囲気がよく伝わる。日本マクドナルドは半世紀にわたり、国内のファストフード文化に大きな影響を与えてきた。

 ところがこの1号店よりも20年以上前に、知る人ぞ知る、国産ハンバーガーの草分け的な店が生まれていた。

 東北地方きっての歓楽街・仙台市国分町。コック姿のレトロな人形と「Est・1950」と書かれた看板が目を引く「ほそやのサンド」はある。これこそ、日本で現存する最も古いハンバーガー店なのだ。

 2代目店主の細谷正弘さんが説明する。

「初代の細谷正志は戦後、山形県東根町(現東根市)の神町にあった米軍基地(神町キャンプ)の下士官クラブで働いていました。そこでハンバーガーに出合ったんです。戦中、海軍の予科練にいた親父は、米兵が栄養たっぷりのハンバーガーを2個も3個も食べるのを見て、『戦争で負けるのは当然だ』と感じたそうですね。基地内で4~5年働いた後、独立して基地のすぐそばに店を出したんです」

 1950年のことだ。正志さんはその1~2年後、仙台市にあった進駐軍ヘッドクオーター(司令部)近くに国分町店をオープン。さらに市内苦竹を拠点とする米軍苦竹キャンプの前にも出店し、計3店舗を構えた。

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