ミッツ・マングローブ「『過去』が生まれない『ドライフラワー』な時代」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ミッツ・マングローブ「『過去』が生まれない『ドライフラワー』な時代」

連載「アイドルを性せ!」

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ミッツ・マングローブ

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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、過去が生まれない時代について。

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「今年ヒットした曲って何かあった?」。そんな会話をした憶えのあるアナタ。完全に歳を取った証拠です。漏れなく私もそのクチです。歳を取るというのは、「今」を切り取る力が衰えること。なぜなら若い人たちに比べて、すでに多くの「今」を経験し、「過去」を蓄積してきたからです。特に流行に関して、人は30過ぎたぐらいから「今」の輪郭がぼやけてきて、把握するのがどうでもよくなってきます。いつの時代も「近頃のアイドルはみんな同じ顔に見える」とボヤいているおっさんやおばさんがいるのはそういうことです。

 ちなみに2021年上半期はAdoさんの『うっせぇわ』が話題になりました。どういう曲か知ってはいますが、残念ながらフルで聴いたことはありません。どうせ年末辺りになればたくさん耳にする機会があるだろうと、焦って聴こうとも思っていません。『うっせぇわ』以外にも、優里さんの『ドライフラワー』という曲も大ヒットしているとか。昨年の『香水』に続き、今年は『ドライフラワー』と、なんだかとてもアポセカリーな匂いがぷんぷんします。どこか無印良品な感じ。決して無印がいけないわけではありません。

 そう考えると、明菜ちゃんが『難破船』を命からがら唄う傍らで、マッチが『愚か者』を熱唱し、さらにそれを横目に産後間もない聖子ちゃんが『Strawberry Time』を唄っていた時代というのは、やはり正気の沙汰ではなかったのだとつくづく痛感します。当時も無印はあったはずなのに。でも、そんな「過去」があるからこそ人は安心して歳を取れる。今を「今」として生きるために何より必要なのは、胸を張って「過去」と呼べる時代の存在なのです。


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