平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
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女子200メートルリレーで日本新を出した日本代表チーム=7月4日、神奈川県相模原市 (c)朝日新聞社
女子200メートルリレーで日本新を出した日本代表チーム=7月4日、神奈川県相模原市 (c)朝日新聞社

 指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第77回は、「覚悟」について。 

【写真】女子200メートルリレーで日本新を出した日本代表チーム

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 7月3、4日に神奈川県相模原市であったサマーチャレンジ記録会で、日本代表の男女のリレーチームが日本新を出しました。五輪にはない200メートルリレーですが、選手もスタッフも大いに盛り上がりました。

 男子(塩浦慎理、難波暉[あきら]、関海哉、中村克[かつみ])は従来の記録を0秒87更新。女子(五十嵐千尋、池江璃花子、酒井夏海、大本里佳)は3日に日本記録を1秒13上回ると、翌日のレースでさらに0秒15短縮しました。

 この時期に男女で日本新を出せたことは、順調な仕上がりを感じさせます。五輪種目の400メートルリレーは厳しい戦いになりますが、本番でも積極的にチャレンジしてほしいと思います。

 北島康介を始め五輪で結果を出した選手に共通しているのは、「覚悟を決めていた」ということです。

 自分が決めたことに迷いなく打ち込み、どんなに苦しいときも困難に立ち向かっていく。メダリストに共通するのは、揺るぎのない「覚悟」だと思います。

 2012年ロンドン五輪の女子メドレーリレーで銅メダルを取った自由形の上田春佳は、東京スイミングセンターで小学生のころから教えていました。普通のジュニア選手に「絶対に五輪に出てメダルを取る」という強い気持ちを芽生えさせられたことが、この成績につながりました。北島や中村礼子、リレーメンバーの寺川綾、加藤ゆかといったモチベーションの高い選手と練習をして、目標や情熱を共有できたのも大きかったと思います。

 勝負ごとなので、最先端のトレーニングで実力をつけることはもちろん大切ですが、大きなストレスのかかる五輪のような最高峰の大会では、覚悟が決まっているかどうかという心の持ちようで、結果が変わってきてしまうのです。

 相模原の大会を見てから長野県東御市での準高地の合宿に戻りました。指導している3人の社会人選手、萩野公介、青木玲緒樹(れおな)、大橋悠依は、充実した内容の練習ができています。覚悟を決めた、という実感があります。本来であれば何年も前からこういうチームを作りたかったのですが、競泳の指導は思い通りに進むことばかりではありません。

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平井伯昌

平井伯昌

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/東京五輪競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数

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