なぜだろう。テレビのバラエティ番組などは、収録するスタジオの真ん中に若い男女の視聴者を集めている。ギャグに反応する笑い専門の集団である。番組が盛り上がるのだから大切な要素ではあるが、ついていけない時も多い。
日本人は大勢に逆らうことをしないから、居酒屋などで上司の発言にいっせいに笑う集団などを目のあたりにすると、スタジオでの光景を思い出す。黒柳さんや私にとって笑えないものが本当に面白いのか、何人かの若い友人に聞いてみた。
「あの番組の徹子さんと芸人さんの部分は面白かった」という意見がほとんど。芸人さんの芸が面白かったというより、徹子さんと芸人さんとの間のギャップが面白かったということのようだ。
笑いとは何か。「てなもんや三度笠」などで一世を風靡した澤田隆治さんも亡くなった。笑いの変質は時代の象徴かもしれない。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『明日死んでもいいための44のレッスン』ほか多数
※週刊朝日 2021年7月2日号