ある民間企業の研究者がこういぶかる。

「昨秋、感染研のゲノム解析が進んでいないようなので、ゲノム解析の協力を申し出てみました。ところが、返事は『間に合っています』でした」

 今年に入り、感染研は民間企業などに解析依頼をするようになったが、具体的にどこの検査機関に検体サンプルをどれだけ出しているのか、情報がほとんどオープンにされていないという。

 新潟大学名誉教授の岡田正彦医師が指摘する。

「このうえ東京五輪を強行すれば、海外から9万人もの大会関係者が入国するというからゾッとします。世界中の変異株が入ってくることでしょう。インド株だけに振り回されるのではなく、マスクや手洗いなど基本的な感染対策をしっかりやるしかありません。コロナ封じ込めの優等生だった台湾でも感染者が急増しており、アジアも安心していられません。第4波のピークが過ぎつつある今こそ、しっかりした対策を講じるべきです」

 PCR検査やシーケンスの実施数が絞られたままインド株の蔓延を招いたのなら、もはや人災以外の何物でもない。(本誌・西岡千史、亀井洋志)

週刊朝日  2021年6月4日号