田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
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 大村愛知県知事へのリコール運動での署名偽造事件。ジャーナリストの田原総一朗氏は、団体の会長、応援団として活動していた高須、河村両氏について言及する。

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 一体なぜ、このようなことが起きたのか。事件が報じられたときから、こんなバカげたことを起こす人間たちの神経が信じられなかった。

 愛知県の大村秀章知事への解職請求(リコール)運動での、大量の署名偽造事件である。約43万5千人分の署名の8割超の約36万2千人分が偽造だったのだ。

 2019年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展の展示内容に問題ありとして、実行委員会の会長だった大村知事の解職の賛否を問う住民投票の実施を求めていたのである。この企画展は、右派勢力から大攻撃され、一時会場を閉鎖していた。

 私自身、「あいちトリエンナーレ」の会場に行き、責任者である津田大介氏に案内してもらって視察したが、右派勢力の攻撃はわかるが、言論・表現の自由として問題はないと捉えていた。

 リコール運動団体の会長は美容外科「高須クリニック」の高須克弥氏で、名古屋市長の河村たかし氏は応援団として参加していた。

 今回逮捕されたのは、リコール運動団体の事務局長で、元県議の田中孝博容疑者ら4人であった。

 田中容疑者は日本維新の会の元衆院選公認候補予定者であった。

 20年10月に名古屋市の広告関連会社に依頼して、佐賀市内で署名偽造のためのアルバイトによる名簿の書き写し作業が行われたということだ。

 アルバイト集めの発注書には、約474万円の費用が記載されているということである。

 金銭を払って署名を偽造させたというのは極めて悪質で、資金の出所を究明すべきである。

 しかも、こんな悪質な不正を行いながら、運動団体が署名期間中に集めた署名は計約43万5千人分で、解職を問う住民投票に必要な法定数約86万7千人分の半分でしかない。

 田中容疑者は逮捕されたとき、駿河湾を望む静岡県伊豆市内のホテルに滞在していたが、取材に対して次のように語っている。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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