スムーズに進まない新型コロナウイルスのワクチン接種。茨城県城里町や兵庫県神河町の首長が優先接種を受けていたことに批判が集まっているが、今度は自治体の職員が、住民に先んじて“集団接種”を受けていたことが週刊朝日の取材で明らかになった。
自治体職員が高齢者に先んじてワクチン接種を受けている──そんな情報が本誌に飛び込んできた。その自治体とは、5月12日から75歳以上の高齢者の集団接種が始まった東京・多摩市だ。市役所の関係者がこう憤る。
「現在届いているワクチンのうち、数百人分を市の職員が先行接種したと聞いています。市民からは予約の専用電話や、インターネットの予約サイトがつながりにくいと不満の声が出ているのに、これでは市の職員を優遇していると見られても仕方がありません」
数百人分となるとかなりの数だが、そんなことがあり得るのだろうか。事実関係を確認するため多摩市役所に問い合わせると、保健医療政策の担当者が対応した。多くの市職員が優遇的に接種を受けたのかを問うと、「事実とはちがう」と断言し、こう回答した。
「多摩市では集団接種会場でワクチン接種を行っています。会場で市民の方々に接する職員が感染源とならないように接種させていただきました。東京都のほうにも、接種会場で従事する職員は医療従事者に準ずると確認したうえで、ワクチンを打っております」
多摩市では4月上旬から医療従事者へのワクチン接種を始め、それが終わるタイミングで、大型連休に入ったころから職員に打ち始めたという。
厚生労働省のホームページによれば、ワクチンの優先接種の対象となる「医療従事者等」には、「自治体等の新型コロナウイルス感染症対策業務で、新型コロナウイルス感染症患者・疑い患者に頻繁に接する業務を行う職員」も含まれる。この点、市の言い分にも一理あるようにも聞こえるが、接種した職員の総数を尋ねると、「300人ちょっと」との答え。