※写真はイメージです (c)朝日新聞社
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(週刊朝日2021年4月9日号より)
(週刊朝日2021年4月9日号より)

 新型コロナウイルスが世界で猛威を振るい始めてから1年が経った。人々の生活環境は一変し、人生設計に狂いが生じた人も多いはずだ。そのなかで、人知れず「孤独の闇」に入り込んでしまった人への対策が急務になっている。政府は孤独・孤立対策を宣言したが、はたして処方箋はあるのか。

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 昨年末、自殺対策に取り組むNPO法人東京メンタルヘルス・スクエアに、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を通じてメッセージが届いた。そこには、こう書かれていた。

「死にます」

 自殺対策の現場では、自殺をほのめかす言葉は珍しいわけではない。しかし、「死にたい」と「死にます」では意味が異なる。「今から死ぬ」と言う人には、緊急対応が必要になるからだ。

 このときも、相談員は即座にカウンセリングセンター長の新行内勝善さんに連絡し、詳細を報告。新行内さんは緊急対応が必要な案件と判断し、警察に通報、自殺を止めるための協力を要請した。

 新行内さんは言う。

「『死にます』というはっきりとした言葉が出て状況が差し迫ると、通報する必要があります。そうしたケースは月に1件あるかないかですが、昨年は年末だけで何件も警察への通報を検討しなければならない状況がありました」

 同センターでは、対面や電話のほかに、LINEを使った相談にも力を入れている。昨年末からは、相談員の数を2倍以上に増やし、毎日20~25人の態勢で応じている。

「コロナの感染が広がる前は、1日の相談申し込み件数は100件程度でした。それが、今は1日200~250件ぐらいにまで増えています」(新行内さん)

 内容はさまざまだが、年末から孤立・孤独を訴える人が増えたという。

 離婚して子供にも会えず一人になり、仕事でも大きなトラブルをかかえた男性、コロナ禍で人と会えず、悩みを友人にも相談できない女性、親がコロナ禍で経済的に苦しくなり、さらにずっと家にいたことで精神に不調をきたした高校生が、自傷行為をしたという相談もあったという。

 警察庁のまとめによると、2020年に自ら命を絶った小中高生は499人。前年比で100人増え、統計が確認できる1980年以降で最多となった。

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