全体の自殺者も2万1081人で前年比912人増。前年を上回るのは09年以来で、女性の自殺者は7026人(前年比935人増)にのぼった。

 同センターに寄せられる相談は、LINEを通じてのものが約8割を占める。ところが、LINEが保有する個人情報が、中国の関連企業からアクセスできる状態にあったことが発覚。それを受けて同センターは、3月20日からLINEによる相談を一時中止せざるをえなくなった。

「若い世代は特にLINEを通じての相談が多い。1日200~250件あった相談申し込み件数は、LINE相談を一時中止して150件程度まで減りました。ホームページ上のチャット機能やツイッターなどを通じた相談も受けていますが、気軽に連絡を取りやすいLINEが使えなくなったことの影響は大きいです」(新行内さん)

 コロナの感染拡大が始まる前から、日本の15~34歳の死因は自殺がトップだった。主要先進国で自殺が若者の死因の1位なのは日本だけだ。

 日本の若者は孤独を感じやすいことも指摘されている。OECD(経済協力開発機構)加盟25カ国を対象に、03年に実施された15歳の意識調査では、「孤独を感じている」と回答した比率は、日本が29.8%でトップ。2位のアイスランド(10.3%)の約3倍の差があった。

 孤独・孤立問題を研究する早稲田大学の石田光規教授(社会学)は言う。

「もともと日本は孤独に陥りやすい環境があったにもかかわらず、コロナの影響で友人と会うにも理由が必要になってしまった。新しい友人もできない。そのため、もともと他人とのつながりが薄い人は、ますます社会から孤立しています」

 誰にもみとられることなく亡くなる「孤独死」も、高齢者だけの問題ではなくなっている。

 大阪府警が初めて実施した調査によると、19年に府内で、遺体発見まで2日以上かかった事案は2996人。そのうち働き盛りの40~50代が18.4%を占めた。

 単身世帯の増加に伴い、孤独死は今後もさらに増えると予想されている。国立社会保障・人口問題研究所によると、1985年に50歳時に結婚をしたことのない人の割合は男性3.9%、女性4.3%だったが、2015年にはそれぞれ23.4%、14.1%に増えた。40年には、29.5%、18.7%まで上昇すると推計されている。

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