「確かに、私と元平副市長、後援会長のA氏の声です。冨田市長の側近2人ですから、怖かったです」

 こう認めたが、さらに事情を聞こうとすると、「今、池田市議会の百条委員会で調べているので」とだけ話した。

 元平副市長は本誌の取材に対し、「10月29日に秘密保持契約書のことでA氏とB氏との会合に同席した。百条委員会の証人に出ますから、詳しくはそこで話をします」と語った。その後、副市長は12日午前に開かれた百条委員会で「冨田市長に命じられB氏を呼び、A氏との秘密保持契約書にサインさせた」と市長の関与を認めた。

 問題はこれだけではない。3月10日付で冨田市長は大阪地検特捜部へ刑事告発された。訴えたのは、東京都内の会社社長で、罪名は公職選挙法違反と背任だ。

 本誌が入手した告発状と添付資料によると、冨田氏は池田市から支給されている市役所の駐車場を無料で使用できる定期券を後援会長のA氏に提供。それが、有権者に対する寄付行為であり、税金を特定の市民、支援者に供与することは背任だと告発状には記されている。

 本誌は告発状にある冨田氏に支給されている定期券の使用履歴で調べてみた。同市総務課によると、昨年4月から11月まで46回、概算で約6万9千円を利用している。中には不可解なものが散見される。

 例えば、昨年5月11日の定期券の履歴では、「入庫時間13:35」、「出庫時間 15:33」と記録されている。この日、冨田氏は朝8時45分から新型コロナウイルスの対策会議があり、それ以降も打ち合わせや来客が入り、午後5時からは事業見直し会議に参加するなど多忙だった。記録の時間帯に駐車場の出入りをするのは、考えにくい。

 冨田氏は百条委員会の質疑で定期券を受け取ったことは認めており、「定期券は受け取っているが、何処かの引き出しにしまったままと思う。ほとんど使用していない」と答弁していた。

「告発状にあるように冨田氏が定期券をA氏に渡し、使用させていたならサウナ以上の大問題。公職選挙法違反などに問われても仕方ない。冨田氏が定期券をA氏に渡すのを見たという職員の証言もある。また秘書課のB氏への秘密保持契約書の問題では、元平副市長も外出している。副市長の外出は、原則として市長の許可が必要なはず。百条委員会でさらなる追求となるでしょう」(池田市議)

 冨田氏に告発状について取材を申し込んだが、期限までに回答はなかった。百条委での審議が待たれる。(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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