※写真はイメージです (GettyImages)
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1週間の労働時間が週60時間を超える雇用者の割合 (週刊朝日2021年3月12日号より)
1週間の労働時間が週60時間を超える雇用者の割合 (週刊朝日2021年3月12日号より)

 日本政府は重要政策の一つとして、働き方改革を推進している。多くの職業のなかでも、長時間労働が問題視される医師に関しても、働き方を見直す動きが活発化している。今後、実現すべき医師の働き方のビジョンや具体的方策はあるのか。好評発売中の週刊朝日MOOK『医者と医学部がわかる2021』からお送りする。

【一覧表】1週間の労働時間が週60時間を超える割合が最も多い職種とは?

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 日本で働き方改革の推進が急がれる背景には、少子高齢化による労働力人口(働き手)の減少がある。2065年には日本の総人口は9千万人を割り込み、そのうち65歳以上の高齢者は38%台の水準に達することが予測されている。労働力人口が減少する状況で社会を維持するためには、女性や高齢者の活躍が必須となる。そのため、制約要因である正社員の長時間労働や非正規社員の不安定な雇用などを解消する「働き方改革」が求められているのだ。

 こうした状況に対応するため、政府は労働者が多様な働き方を選択できる社会の実現を目指し、17年には「働き方改革実行計画」を決定。労働時間の短縮と労働条件の改善、雇用形態に関わらない公平な待遇の確保、多様な就業形態の普及、仕事と育児・介護等の両立などに取り組んできた。こうした取り組みの成果として、18年には「働き方改革関連法」が国会で可決され、翌19年4月1日から順次施行されている。

 しかしながら医師については、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要なため、「働き方改革関連法」施行期日の5年後となる24年4月以降、時間外労働の上限規制を適用することとなった。そこで、規制の具体的なあり方、労働時間の短縮策などを検討するために、厚生労働省が17年8月に発足させたのが「医師の働き方改革に関する検討会」である。

 医師の長時間労働については広く知られるところであり、さまざまな職種の中でも最も過酷な状況にあるといえるだろう。総務省「平成29年就業構造基本調査」によると、1週間の労働時間が週60時間を超える雇用者の割合は雇用者全体の11.8%を占めるが、これを職種別に見ると医師(37.5%)が最も高い割合となっており、ついで自動車運転従事者(37.3%)、教員(31.6%)と続く。つまり、医師は全職種の中でも最も労働時間が長いのだ。

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