こうした超長時間労働の背景としては、当直が義務化されていること、救急搬送を含めた診療時間外診療、長時間におよぶ手術、来院する患者数の多さ、事務作業の多さといった問題に加え、タスク・シフティング(業務移管)が十分に進んでいない現場の勤務環境等があるという。

 また近年、女性医師の割合は増加しており、14年以降は2割以上を占め、若い世代ほど割合が高くなっている。今後はさらに女性医師が増えることが予想され、男女共同参画の視点からも、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現が急務となっている。

「医師の働き方改革に関する検討会」では、医師の健康確保と地域医療の両立を図ることを目的とし、医師の健康確保と長時間労働の抜本的改革を二本柱として働き方改革に取り組んだ。

 同検討会が22回にわたる会議を経て19年3月にまとめた報告書では、日本の医療について「医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられており、危機的な状況にあるという現状認識を共有することが必要」と強調した上で、「自殺や死を毎週又は毎日考える」医師の割合が3.6%との調査結果を示し、働き方改革の必要性を述べている。

 同報告書では、こうした状況への対策として、24年4月から、時間外労働について「診療に従事する勤務医に適用される水準」として「年960時間以下」を設定し、「地域医療の観点から必須とされる機能を果たすためにやむなく長時間労働となる医療機関の医師」については、「地域医療確保暫定特例水準」として「年1860時間」の上限を適用するとした。

 また、「一定の期間集中的に技能向上のための診療を必要とする医師」向けの水準も設け、初期臨床研修や専門医研修を受ける医師と、臨床医6年目以降を対象にわが国の医療水準の維持・発展に向けて高度な技術を要する医師について、時間外労働の上限を「年1860時間」とした。

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