課題研究の発表をする山形東の生徒 (学校提供)
課題研究の発表をする山形東の生徒 (学校提供)

「スーパー高校生」はどうやって誕生したのだろうか。わずか92人という東大の学校推薦型選抜(旧推薦入試)の合格者たちは、もともとの強い個性のほか、高校で学んだ教育にも大きな影響を受けているようだ。高い合格実績を上げている4校を紹介する。

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 全国最多3人(判明率94.6%時点)の合格者を出した高校は、秋田、山形東、麻布(東京)の3校だ。その中で、初の推薦合格者が生まれた山形東の躍進ぶりが目立つ。昨年の一般選抜では10人の合格にとどまっていた県立校だ。

 卒業生には遠藤利明元五輪相やテレビ朝日の田中萌アナウンサーらがいる。そんな県内トップ校が全国的に躍進したのは、3年前からある試みに挑戦しているからだ。

「こうやって解くんじゃないか」
「どう考えたの? そうじゃないと思う」

 生物の授業の一コマだ。理数科主任の佐々木隆行さんによると、テスト間近には生徒同士が問題の解き方について議論する。生徒は30人。教員は生徒から求められたときにアドバイスする。佐々木さんはこう話す。

「今はほとんどの授業で対話など探究型学習を取り入れています。こうした学習スタイルは探究活動にもつながっていきます」

 探究活動とは、生徒自ら設定したテーマに答えを出していく活動だ。山形東では探究活動を積極的に行う探究科(1学年約80人)を2018年に設置。普通科(同約160人)でも探究活動を実施している。

 その中心になるのは、「山東(やまとう)探究塾」という授業だ。1年次に調査や協働の仕方など基本スキルを学ぶ。2年次に自分の課題を決め、大学や行政機関などに協力を求めて研究する。論文のような冊子にまとめたり、大会やコンテストにも参加したりして成果を伝える表現力を磨く。3年次は探究的な学びをさらに深める。

 探究科の1期生が今の3年生で、早くも成果が出た。工学部に合格した小野琢さんは「推薦では将来やりたいことをアピールした」と振り返る。探究活動では山形市内を流れる水路に着目し、地球温暖化を防ぐのにどれだけ効果があるか検証したが、限界を感じた。そこで二酸化炭素を減らす根本的な解決策として、「シリコンフォトニクス」という研究分野に注目するようになった。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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