あるペット販売チェーンでは、それまで月平均で十数匹だった犬の生体販売件数が、4月以降に30匹近くに急増したという。なかでも目立ったのが店のショーウィンドーでペットを見て、その場で買っていく家族客だった。

「外出自粛で家にいる時間が長くなったからペットでも飼おうか」

 そんな軽い気持ちでペットを飼い始めた飼い主の多くが、ペットを育てる大変さに音を上げたためではないかと、関係者らは指摘する。

 大分県で保護された犬や猫の里親募集活動を行う「おおいた動物愛護センター」でもこの時期、犬猫を飼いたいという譲渡希望者が増えた。

 犬猫の譲渡希望者を対象にした事前講習会への参加者は通常ひと月30組程度だが、新型コロナの感染の広がった4~5月は50組以上に増えた。埼玉県で保護活動を行うNPO法人の代表もこう振り返る。「室内で飼える小型犬や散歩が不要な猫がいい、という人が普段より目立ちました」

 しかし、この急速なペット需要は瞬く間に終息した。

 前述のおおいた動物愛護センターでは6月以降はもう譲渡希望者は例年並みに落ち着いた。代わりに急増したのが、

「ペットを引き取ってほしい」

 という正反対の依頼だった。

 神奈川県のある保護団体も従来月に2~3件だった引き取り依頼が、この時期には月20件近くまで増えた。都内をはじめ各地で保護活動をしている団体には多いときで1日50件近い引き取り依頼があったという。

 こうした傾向を背景に悪質なケースも見られた。8月30日、千葉県船橋市のショッピングセンター内にある保護猫カフェの店頭にキャリーバッグを持った女性がやってきて、カフェの看板の裏に隠すようにキャリーバッグを置き、何事もなかったかのようにその場を立ち去った。その一部始終が防犯カメラで撮影されて、全国ネットのニュースで流れた。

 保護団体にも、もちろん限度がある。飼育放棄された猫や犬を預かり、散歩や餌やりなどの世話をして躾(しつけ)ができていないペットに教育をほどこす。譲渡会などを通じて引き取り手を探す取り組みを続ける団体は日々の業務に追われる。そこに通常より多いペースで引き取り依頼が集中するようになったのだ。

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