それにコロナ禍でペットの譲渡会は「密」を避けるために開きづらくなり、出会いの場にもなっていた保護カフェなども営業自粛や時間短縮をせざるをえなくなった。

 埼玉県の保護団体もそれまで週末ごとに開催していた譲渡会が、春ぐらいから開けなくなった。保健所や動物愛護センターから新たに動物を引き取ることができなくなっているという。

「施設で保護できる数には上限がある。譲渡会が開けないと、そうした動物たちがやむなく殺処分されてしまう恐れが高まってしまうが、現状ではどうにもならない」

 保護する動物が増えれば飼育の負担も経済的負担も増すばかり。保護活動ができなくなり閉鎖する可能性を考えたシェルター施設も少なくなかった。

 そんな状況を乗り切ったのは、各保護団体の工夫だった。個別譲渡会やバーチャル譲渡会といった密を避けながら出会える場を開催したのだ。

 SNSなどに犬猫の写真や動画をアップして里親希望者を募り、個別に顔合わせや講習会を行ったうえで、譲渡に結び付ける。この方式は少しずつ各地に浸透していった。譲渡ではなく、短期間飼育のお手伝いをする「預かりボランティア」制度を用いて、飼育の負担を軽減した施設も出てきた。広島市に本部があるNPO法人みなしご救援隊「犬猫譲渡センター」の佐々木博文理事長は「人数制限をしたり、面会時間の制限をしたり、マスクや消毒などのケアをしたうえで譲渡を行っている。東京も含め、少しずつ飼育放棄は減っている」とその成果を語り、こう訴えた。

「一時期、コロナ禍が理由で家を手放したり職を失ったりしてペットが飼えなくなったという人がいたのは事実です。しかし、ペットを手放す人の大半はコロナ禍のせいではありません。私は人間のモラルの問題だと思います。2度目の緊急事態宣言では去年のようなことが起きないことを祈っています」

 小さな命を守る活動は、コロナ禍でも休みなく続けられていることを忘れてはならない。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2021年2月19日号