それは、欧米の医療界に比べて、日本では民間病院が非常に多く、民間病院の多くは新型コロナ患者に対応できる医師や看護師がいないために、患者を受け入れることができないのだという。
日本医師会の中川会長も、そのことを前提にして、「医療崩壊が起きている」と言っているわけだ。
だが、東京慈恵会医科大の外科統括責任者の大木隆生氏は、外科や人工呼吸器を扱う医師がいる病院ならば、新型コロナ患者にも対応できるという。しかし、民間病院の多くは、新型コロナ患者を受け入れると、それなりの危険性もあり、他の患者たちが嫌がることを恐れて、受け入れを拒否しているのだという。
日本医師会も会員の多くが民間病院なので、民間病院の拒否反応を前提にしているわけだ。
米国や欧州の国々は、コロナ禍で思い切って医療制度を改革した。平時は新型コロナのような感染症は少ないので、感染症対応病院は少ない。だが、コロナ禍が拡大したので医療制度を改革して、一般病院が新型コロナに対応できるようにした。ところが、日本では厚生労働省や医師会の反対が強くて、医療制度の改革ができていない。
日本も思い切って医療制度を改革すべきだ、と大木氏は主張しているのである。
※週刊朝日 2021年2月12日号
■田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数