アイドル業界の変遷に加えて、社会の変化もAKB48グループにとって逆風だ。アイドル評論家の中森明夫さんも「現状は厳しい」と話す。

「AKBの最大の魅力は、『会いに行けるアイドルグループ』であったことです。専用の劇場があって、お客さんが直接会いに行けた。それが春先からの新型コロナ感染拡大によって、その根幹が揺らいでしまいました。大規模会場で握手会をしてきた『接触系アイドル』のAKBは、どこよりもコロナの直撃を受けたグループだと思います」

 NGT騒動、コロナ禍に加え、近年のAKB48グループでは突出した知名度を持つ指原莉乃(28)の卒業が、この短期間に重なったことも大きいと見る。その後、名前と顔がすぐに浮かぶようなスターを作れなくなったことも人気低迷につながったと分析する。

「指原さんご自身が言うように、顔がかわいいわけでもない、歌がうまいわけでもない、ダンスが得意なわけでもないアイドルがトップに君臨し続けた。そのうえ指原さんはスキャンダルがあって左遷されながら、むしろそれをきっかけにのぼり詰めた特異な存在。指原莉乃というアイドルがあまりにも突出していたがゆえに、結果的にその後のAKBを衰退させたとも言えるんじゃないでしょうか」

 紅白出場を逃し、テレビ露出が減ったとはいえ、アイドルの活躍の場は今、豊富にある。

「元々は劇場を中心に活躍していたわけですし、今はインターネット配信でいつでも露出できます。人数も多く抱えているし、古くからのファンも一定数以上いるので、現状を維持でき、コロナ禍を乗り越えられれば復活の芽も十分にあると思います」(中森さん)

 2021年、起死回生の一手を見られるか。
(本誌・秦 正理)

※週刊朝日オンライン限定記事

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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