
創業者である父との親子対決が注目を集めた大塚家具の大塚久美子氏が12月1日、ついに同社の社長を辞任した。2015年に社長に就任して以来、4期連続で赤字。昨年12月にはヤマダ電機を展開するヤマダホールディングスの傘下に入ったが、赤字は解消できず、経営悪化の責任を取った形だ。退職金も「出す予定はない」(大塚家具広報)という。
父・勝久氏の始めた会員制を廃止し、低~中価格帯の商品もそろえたカジュアルな店舗へと転換を図った久美子氏。彼女はいったい何を残したのか。いまの店舗を訪れてみた。
日本最大級の広さと品ぞろえを誇るという大塚家具の有明本社ショールーム(東京都江東区)。久美子氏が客に対し直々にショールームを案内していた場所だ。YouTubeで店舗を案内している動画を見ると、「お客様の幸せな日常をサポートするために、どのような空間を作っていったらいいか、ご一緒にプランニングしていく」などと熱く語っていた。
しかし、カジュアルさを追求したスタイルもうまく機能していないように感じた。記者が訪れると、特に店員に声をかけられることもなく、入店。家具を30分以上見て回ったが、接客をしてくる店員は一人もいなかった。というか、現場に店員がほとんどいない状況だった。自慢のショールームも店員がいないと寂しさが増すばかりだ。
記者が久美子氏の退任の影響について店員に尋ねると「正直ないですね」と苦笑気味に答えた。今後は「ヤマダ電機の家電を増やしていく予定だ」という。経済ジャーナリストの松崎隆司さんはこう見る。
「父が作った大塚家具のDNAを壊すところから始め、完全に壊れ、業績も落ちた。お家騒動もよくなかったですね。かつてのブランドイメージもほとんどない。今は役員も半分以上がヤマダ電機から来ている。これからは『ヤマダ家具』の方向性を強めていくのではないでしょうか」
こうした状況を父の勝久氏はどう思うっているのか。代表取締役会長を務める匠大塚に取材を申し込んだが、「大塚家具関連の取材は一律に断っています」(匠大塚の担当者)と出てこなかった。