また、亡くなった人を思って心の痛みを感じたり、急に悲しみがこみ上げたりする「悲嘆が長引いている」人は18~30%にも上った。

 悲しみを引きずらないために何が必要か。同センターがん医療支援部長の加藤雅志さんは言う。

「最終的には、『ああ、あの人と一緒にこういうふうに過ごせたなあ』とか良い思い出を温かく思い出せるようになることが前に進む一歩につながります。同時に、胸がきゅっと締まるような、切なくつらい感情が必ず出てくるでしょう。でも、それにも勝るような大切な人を思う温かい気持ちが伴えば良いのです」

 自責の念に駆られてはいけないという。

「1年ぐらいかけて徐々に立ち直っていく人もいれば、そうでない人もいます。人それぞれです。ただ、確実に言えるのはどんな人も必ず後悔するということ。決して自分を責めずにいてほしい」

 看取りまで一生懸命した人こそ「もっとやれたのでは」と苦しみがちだ。臨終に立ち会えなければ、その傷は深くなる。

「立ち会えたからといって、最後にいいケアができたということではないのです。そこに至るまでの良き時間をできるだけ一緒に過ごしたということのほうが大切だからです。十分やれることをやっているはずです」

 周囲の理解も必要だ。「あなたのせいだ」と責めてはいけないことはもちろん、「いつまでもくよくよしないで」などの安易な励ましは遺族を傷つける可能性がある。

「人の悲しみは簡単に消えるものではありません。悲しい人が悲しみを表現できる場があり、周囲の人も温かく見守るような文化ができてくると良いと思います」

 また、グリーフケア(死別の悲しみからの立ち直り)に詳しい看護師で僧侶の玉置妙憂さんはこう話す。

「人によって違いますが、1、2年かけて徐々に立ち直っていくものだと思います。自分のペースでやっていくことが大事です。亡くなるのが突然でも長い看護の末でも、結局は後悔することになります。だから『やったことがベスト』と受け止めるしかない。悔やんでも事実は変わりませんから、事実としてそのままのみ込むことです」

 自身も今年春に父を心不全で突然失い、思い出すたびに胸が痛む。だが、悔やむよりもきちんと悲しむことが大切だと考えている。

「悲しいけれど、大切な人との別れは皆に起きることなのです。自分だけではないと思うことで、少しでも楽になれたらいいです」

(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2020年12月25日号