※写真はイメージです (GettyImages)
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給料の一部を退職金に回してもらえば手取りが増える (週刊朝日2020年12月11日号より)
給料の一部を退職金に回してもらえば手取りが増える (週刊朝日2020年12月11日号より)

 年金をもらいながら有利に働ける自営業だが、ずっと会社員だった人の中には、年金がカットされたり、社会保険料を取られたりしても、やはり会社勤めのほうが気楽だと考える人も多いはずだ。思わぬ好条件で誘われて、高い給料で思う存分、腕を振るいたいと思っている人だっている。

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『知らないと大損する! 定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)の著者で税理士の板倉京さんには、そんな人たちに提案したい“裏ワザ”があるという。

「会社と交渉して給料の一部を退職金に回してもらう方法です。給料の額を年金がカットされない水準に抑えてもらい、カットした分を退職金に回してもらえば、年金が減らされないだけでなく、社会保険料や税金も安くなるメリットがあります」

 厚生年金に入っている人は、給料と年金を合わせた額が一定の額を超えると、もらえる年金はカットされる。60歳で退職し、再就職後の給料が月25万円、65歳になる前にもらえる「特別支給の老齢厚生年金」が月10万円のケースを考えてみよう。

 給料と年金の合計は月35万円。28万円を7万円上回っているから、年金はその半額の3万5千円カットされてしまう。

 そこで給料を月18万円にしてもらい、25万円との差額7万円を退職金に回してもらおう。すると、給料と年金の合計は月28万円で、年金はカットされない。退職金には社会保険料がかからないので、退職金に回した7万円分にかかるはずだった社会保険料月1万2194円、年14万6328円分(協会けんぽ、東京都の場合)を浮かすことができる。所得税や住民税も年7万円前後安くなる計算だ。

 合計で実に年63万円以上もお得になる。退職金にも税金はかかるが、社会保険料や税金で浮いた分だけでも十分にそれを上回るという。

「社会保険料は会社と社員が折半して払います。会社側も社会保険料が減るメリットがありますから、給料を退職金に回してもらえるように交渉はしやすいと思います。再就職する際には、ぜひ話し合ってみてください」(板倉さん)

 なお、60~64歳の人は22年4月から、年金がカットされるようになる給料と年金の合計額が、今の28万円超から、65歳以上の人と同じ47万円超に上がる。今までより高い給料でも年金がカットされにくくなるが、上回りそうなら交渉してみよう。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2020年12月11日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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