シャンシャンは日中の協定で12月31日までに中国・四川省に返還される。本来は去年6月に返還予定だったが、東京五輪後もシャンシャンが上野で過ごせるようにと協議した結果、返還期限が延長された。五輪はなかったけど、返還期限はあと1カ月ほどになってしまったのだ。

 ただ、新型コロナの感染者の拡大に歯止めをかけられないなか、街は「さよなら」の機を前にしても大々的に集客イベントを打てないでいる。

 普段からパンダグッズを多数用意している駅構内の和風小物店「遊中川」では「駅全体で検討中」と言う。土産店「上野ランド」の店員は「なんらかの記念商品を販売したりしたいけど、今回は諦めないといけません」と残念そうに語る。

 駅前のフードコートで各種「パンダパン」を売る「うえのの森のパンやさん」では動物園帰りの客がパンダのパンを買い占めていた。店員は「うちはパンダの恩恵を受けている店。シャンシャンがいなくなってしまうのは残念。記念の商品を作るかどうかは検討中だけど、このご時世ではなかなか……」と話す。

 どうやら、上野の街は「ありがとうシャンシャン」イベント前夜という状況で、本音では盛大に送り出したいのだが二の足を踏んでいるようだ。

 アメ横商店街で皮革用品を売る店では「パンダのおかげでここまでやってこれたといってもいいと思ってる。大々的にさよならイベントをしたいところだが、やっぱりコロナがね。人が集まって密になるようなことはやりにくいよね。例年なら歳末にかけて買い物客が増えるかき入れどきなんだけど、そうも前のめりになれないよ」と打ち明けてくれた。

 実はコロナ禍で、シャンシャンの中国返還日程も、その決定が遅れている。本来なら返還1カ月前には検疫をスタートし、移送のためのおりに入れる訓練も始めなければならない。しかし、コロナで航空便は軒並み欠航。特にジャイアントパンダ繁殖研究基地がある中国・成都への直行便は出ていない。直行便のある上海便に乗せ、その後は陸路で移送するなどの案も出ているが、シャンシャンの負担を最小限にするには時間のかかる陸路はできるだけ避けたい。というわけで、現在も東京都と中国で協議が続けられているという。

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