「菅さんの評価はまだわからない。彼は秋田の農家出身だろう。豊臣秀吉も百姓出身だったけど、秀吉のように、金のようなキラキラしたものに目が行ってしまわないよう注意が必要だ。『脱炭素』も、単にキラキラしたテーマだから飛びついただけだとしたら、危険だ」

 亀井氏は再エネが普及しても、原発をすぐになくすことは難しいと指摘する。

「電力会社と自民党は切っても切れない関係。電力会社のバックアップを受けて当選している自民党議員は多いからね。この依存関係から抜け出すのは難しいことだよ」(亀井氏)

 実際、菅首相の脱炭素宣言には「安全最優先で原子力政策を進める」との文言もあり、原発の再稼働は着々と進む。11月11日には東日本大震災で被災した東北電力女川原発2号機について、地元の宮城県知事が再稼働への同意を表明した。

 政府がその先に狙うのは、原発新増設とも考えられる。18年のエネルギー基本計画で原発は再エネとほぼ同等の20~22%とされたが、この数値を達成するには既存の原発では足りないためだ。

 菅首相は国会答弁で「(新増設は)現時点で考えていない」と言うが、周囲は勢いづく。自民党の世耕弘成参議院幹事長は所信表明翌日の会見で「新しい技術を取り入れた原発の新設も検討を進めていくことが重要」と発言。自民党が11日に立ち上げた2050年カーボンニュートラル実現推進本部の会合でも、電力会社大手でつくる電気事業連合会の池辺和弘会長が、脱炭素の目標達成には「(原発の)新増設やリプレース(建て替え)が不可欠だ」と述べた。

「今、『新増設』を前面に出すと国民の反発は避けられないため、菅首相はまずは『CO2排出ゼロ』を持ち出した。一方で再生可能エネルギーを推進するのはほどほどにして、実現が難しいとなれば、国際公約を錦の御旗にして『やはり原発しかない』ということで新設や増設を認める方向に持っていくつもりなのでしょう」(古賀氏)

 次のエネルギー基本計画で原発「新増設」に触れるのか。国民は注視する必要がある。(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2020年12月4日号