18年に改定された計画では16年度に15%だった再エネの比率を30年度までに22~24%に引き上げるとしたが、この数値も「後ろ向き」だとの指摘がある。国際エネルギー機関(IEA)の調べでは、20年前半の日本の再エネは太陽光の拡大などですでに国内総発電量の23.1%にまで上昇しているのだ。千葉大学の倉阪秀史教授(環境経済学)が指摘する。

「50年に温室効果ガス実質ゼロを目指すなら、30年には再エネで40%超という設定が必要。24%は低すぎる」

 急速に再エネ導入が進む欧米や中国に、日本は先行を許してきた。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は「国内では再エネはコストがかかる『理想論』との見方が根強く、導入が進まなかった」と語る。だが、近年は変化が見られるという。

「太陽光のコストは10年間で10分の1、風力は10分の3にまで下がった。12年7月から始まった、再エネの電力を電力会社が一定期間買い取ることを国が約束した『固定価格買い取り制度』も後押しし、太陽光発電が急速に普及しました」(飯田氏)

 19年の日本の太陽光発電の導入量は中国、アメリカに続く世界3位。決して悲観すべき材料ばかりではない。

 再エネ事業に取り組む一人が、自民党重鎮で17年に政界を引退した亀井静香氏(84)。兵庫県丹波市にある東京ドーム約25個分の広さのゴルフ場開発が頓挫した跡地を買い取り、自身が会長を務める会社で太陽光発電所を建設。再エネ事業を通じた地域の経済振興を目指し、21年7月から関西電力に送電を行う。

「バイデン氏がパリ協定復帰を表明し、世界中の銀行で再エネへの投資がトレンドとなりつつある。この分野はまだまだ伸びる」(亀井氏)

 再エネ事業に参入した目的の一つは、日本の「脱原発」を後押しすること。以前は原発の必要性を認めていたという亀井氏の転機は、東日本大震災だ。事故直後の原発に防護服を着て入り、周辺地区に住民が住めない状況を目の当たりにした。「原子力は便利だが、一方で極めて危険なエネルギー源。原発から脱却する必要性を痛切に感じた」と言う。そんな亀井氏は、菅首相の脱炭素宣言をどう見ているのか。

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