自民党 稲田朋美
自民党 稲田朋美

 選択的夫婦別姓の導入に関心が集まっているが、自民党の稲田朋美氏は新たな制度を提唱する。

【衆院議員緊急アンケート! GO TO 解散、五輪について結果を見る】

*  *  *

 選択的夫婦別姓については自民党内でも意見が割れていて、私は反対なんです。

 子どもとお母さんの名字が違うというのはどうなのかな、という思いをずっと持っていましたし、夫婦の戸籍を別々にするとか、子どもの名字を一人ひとり議論して決めていかなきゃならなくなるとか、いろいろなデメリットもあると思うんです。

 一方で、政府は「通称」を拡大しようとしています。ただ、結婚すると96%の女性が名字を変えている現実を考えると、旧姓を通称で使うだけでは解決できない問題があると感じるようになりました。

 結婚、離婚を繰り返した人は、通称を二つも三つも持ってしまうことがあります。戸籍でもたどれず、住民票にも現れない通称がはびこる世界というのは、法的に不安定で、決して好ましいことではないと思うんです。

 そこで思いついたのが、独自に考えた「婚前氏続称(こんぜんうじぞくしょう)制度」です。どういう制度なのか説明します。

 民法にはすでに婚氏続称制度というのがあります。離婚したら旧姓に戻るんですが、3カ月以内に届け出れば婚姻中に使っていた姓を使うことができるという制度です。

 私の案は、これを離婚のときだけではなく、結婚のときにも適用しましょうというものです。

 結婚したら夫婦はまず、どちらかの姓を選んで同じ姓になります。たとえば、小沢さんという女性が、山本さんという男性と結婚したとします。姓は「山本」を選択しても3カ月以内に、旧姓の小沢を使い続けます、と役場に届け出ると、戸籍や住民票は山本ですが、小沢を使う、ということが明記されることになります。

 パスポートや銀行の通帳など公的な書類は小沢だけが通用することになりますが、子どもの結婚式や山本家の葬儀、学校のPTAなど私的な場面では山本を使うことができます。

 要は、通称と今言われているものに、法的な意味を持たせましょう、というのが根本的な考え方です。11月13日の衆院法務委員会で提案しました。

 この制度を唱えているのは今のところ私だけなんですが、党内の女性議員のなかにも興味を持ってくれている人がいます。

(本誌・上田耕司)

週刊朝日  2020年12月4日号

著者プロフィールを見る
上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

上田耕司の記事一覧はこちら