福田裕穂・東大副学長(入試担当理事)
福田裕穂・東大副学長(入試担当理事)

 来年春の東大入試はどうなるのか。新テストの実施に加えて、新型コロナウイルス感染のリスクもある。東大副学長で、入試担当理事の福田裕穂氏に聞いた。

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──新テスト実施や新型コロナ感染拡大は、東大志願にどう影響するか。

 安全志向や地元志向が強くなる可能性はある。しかし、東大だけで日本がもっているわけではない。優秀な生徒が他の大学に行くことは、大学全体の視点からすれば、悪いことではない。

──それでもどんな生徒に志願してほしいか。

 ポストコロナをどうするかが今後の課題になる。これまでの私たちの価値観を壊し、新たな未来を創造してくれるような、そんな生徒に来てほしい。

──感染が想定以上に拡大した場合、入試の中止はあり得るか。

 学校推薦型選抜(旧推薦入試)も一般選抜も中止しない。東大はかつて学生紛争で入試ができなくなった苦い経験がある。今回は最後までやり切る覚悟だ。他の全大学が中止したら考えざるを得ないが、東大を目指す生徒を見捨てられない。

──具体的にはどういった対応を考えているのか。

 消毒液の設置やソーシャルディスタンスを取った席の配置などやるべきものはやる。最悪の場合、共通テストが実施できなくなることも想定しているが、東大の入試はそれでも行いたい。

──授業の進度が遅れている学校もある。出題で配慮するのか。

 出題に変更はない。東大の試験問題は知識ではなく、知識を基にした思考力を問うものになっている。高校などにアンケートを取り、遅れは夏休みを通じて取り戻したと聞いている。再び遅れるような事態が起これば、また考えたい。

──大学院ではオンライン入試を実施した。学部ではどうか。

 大学院入試では想定外の問題も起こったが、全て対応できた。その自信もあるが、一般選抜では1点刻みの入試のため導入できない。パソコンが利用できるレベルに地域格差、学校格差が歴然とある。現時点で公平な実施は無理だ。

 推薦型選抜の面接も対面でやる。感染拡大で東京に来ることができないような状況になれば、オンラインも考える。

──推薦型選抜の定員は今後どうするのか。

 推薦の入学者は「自主性がある」「積極的である」などと教員の評判がいい。まずは定員どおり100人の合格者を出したい。その後、必要に応じ定員増の議論を行っていく。

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