スリットが適切でなく、タイルがはがれてしまったマンション=マンション大規模修繕協議会
スリットが適切でなく、タイルがはがれてしまったマンション=マンション大規模修繕協議会
スリットが適切でなく、タイルがはがれてしまったマンション=マンション大規模修繕協議会
スリットが適切でなく、タイルがはがれてしまったマンション=マンション大規模修繕協議会

 マンションの大規模修繕をどうするか。管理会社に任せきりにしていると、それほど問題はないのに工事を進められてしまうケースがあるという。12年ごとに修繕する“常識”にとらわれることはないと指摘する専門家も多い。ムダな出費を避けて安心な建物で暮らし続けるため、入居者でつくる管理組合が陥りやすい“落とし穴”を知って失敗を避けよう。

【写真】タイルがはがれてしまったマンション

*  *  *

 国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインは、マンションの大規模修繕について12年程度の周期をイメージしている。その昔は約10年周期だったが、材質の向上などで12年程度に延びた。あくまでガイドラインなので、法律で決められているものではない。

 一方で建築基準法は、外壁をタイル張りなどにしたマンションに対し、10~13年ごとに外壁の「全面打診調査」をするように定めている。調査を義務づけているだけだが、このマンションの管理会社は、打診調査と“セット”で12~13年周期の大規模修繕を提案することが多いとされる。

 大規模修繕の周期は、どのくらいがいいのか。

「さくら事務所」(東京都渋谷区)のマンション管理コンサルタント、土屋輝之さんは話す。

「(修繕前にする事前調査の)劣化診断をしても、急いで修繕をする必要はありません。数年ほど先送りできることもあります。リスクのあるところは部分的に修繕すればいい」。あくまで12年は目安の一つであって、16~18年に延ばせるという。

 15年周期での修繕を勧めているのは、「マンション大規模修繕協議会」(東京都品川区)の米澤賢治代表理事だ。技術が進み、かつて金属製が主流だった配管は、塩化ビニールなどさまざまな材質が使われて耐久性も向上。ステンレス製の上水道は、取り換える必要がほとんどないとされる。

 1級建築士で「計画機構」(東京都世田谷区)代表の野崎隆さんは、事前の検査をしたうえで、工事をしない選択肢もある、と強調する。その際、「築年数を2倍」することで、人間と同じようにイメージしやすいという。「築40年は人の80歳で、あちこちにガタがきます。築10~15年なら人の20~30歳、通常の建物は健康体です」

次のページ