マンションの管理組合としてはまず、大規模修繕の周期を12年に固定せず、長期化も検討してみてはどうだろう。ただ、入居者の合意を得るなど修繕前に検討期間が必要なことも忘れてはならない。

「強引にやりすぎると禍根を残し、あとが大変」。そう話すのは、入居約50戸の東京都内にあるマンションの管理組合理事長だ。築40年ほどのマンションは今年、給水管を取り換えるなどの大規模修繕を終えた。工事前の検討期間は約3年をかけたという。

 複数のコンサルタント会社に相談し、説明がわかりやすかった1社へ依頼。施工会社は公募に十数社が手を挙げ、管理組合員の“満場一致”で選んだ。「工事費用と耐用年数でみてトータルで安くすること」(理事長)が決め手だった。「耐久性の高い塗料など、できるだけ良いものを使い、長くもたせるようにしました。次回(の修繕)は18年後に、と思っています」(同)

 実際にコストを抑えつつ、大規模修繕で気をつけるべき点は何か。

 大規模修繕とセットになりやすい外壁の全面打診調査では、足場を組んでやってもらうのではなく、屋上からブランコをつるして壁をたたくだけで「法律を十分にクリアできる」(前出の野崎さん)。足場を組む費用が、仮に1千万円だった場合、ブランコだと100万~200万円程度で済むというのだ。「工事をしなくていい箇所はいっぱいある」(同)

 さらに、前出の米澤さんが相談を受けたマンションでのひどい事例を教えてくれた。

 一つは構造スリット(すき間)の欠陥だ。構造上、重要でない壁に施す手法だが、スリットが適切に設けられていなかったという。年月を経ると壁がひび割れたり、コンクリートがはがれ落ちたりしやすい。そのマンションは過去2回の大規模修繕で見過ごされてきたという。

 外壁のつなぎ目や窓周辺のすき間の気密性を高めるシーリング(目地材)の不備もある。修繕では、劣化したシーリングを取り除いて打ち直す必要があるが、古いシーリングを残したまま打ち増していたという。施工後はなかなか欠陥を見抜けないという。

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