■適正価格は1割 超安値も裏あり

 さらには、給水管の問題。材質がステンレスやポリエチレン、塩ビであれば「さびない」とされるものの、昔ながらの鋼管はさびる。そこで、管内に樹脂系塗料を流してさびを止める「更生」という処置をするのだが、注意したい。更生の工事後10年ほど経ったマンションで、樹脂が溶け出して色のついた水が出た事例があったという。

「管の交換よりも更生のほうが修繕費は安いが、交換するしかありません」(米澤さん)

 そもそも管理組合は、建築の素人だ。そこに付け込む“悪徳業者”は何としても避けたい。

 しかし残念なことに、「業界は“バックマージン天国”で談合が横行している」と前出の土屋さんは指摘する。談合には管理会社やコンサルタントが関係し、施工会社が加わるケースもあるという。誰が主導するのかはケースによってさまざま。妥当な料金水準から推測すると、バックマージンは最大で総費用の約20%にのぼるというのだ。

 例えば、管理組合がA~G社の7社から見積もりをとっても、業者間でB社が受注すると決まっていることがあるという。B社が受注しやすいように、他社の見積書もB社が作成するケースも。

 一連の談合は「素人が簡単に見抜けない」(土屋さん)だけに、やっかいだ。だからこそ、設計会社やコンサルタント会社が破格の安値で請け負うケースは注意したほうがいいという。裏でつながった施工会社が修繕費をつり上げ、結果的に総費用が高額になる恐れがあるためだ。

「大規模修繕ではコンサルタントの9割くらいが自分に利益誘導しており、適正な価格になっているのは全体の1割ほどではないでしょうか」。住宅ジャーナリストの榊淳司さんも警鐘を鳴らす。国交省は実際、管理組合と利益相反にある設計コンサルタントがいると注意を促している。

 こうした“被害”にあわず、安心な建物で暮らし続けたい。管理会社に任せきりにせず、いいアドバイザーをさがして検討していきたい。入居者たちも手間暇を惜しんではいけない。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2020年11月6日号